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「…加藤くんは、好きな人いないの?」
お弁当も食べ終わってそろそろ教室に戻ってもいいような時間。
さっき、加藤くんにけいちゃんを好きなのを見透かされたのが少し悔しくてそう尋ねてみる。
そうすると一瞬だけ目を見開いてからすぐ
「いない」
とだけ返事が返ってきた。
「なーんだ。つまんない」
「つまんないって何笑」
「加藤くん、どんな人を好きになるんだろって思ったのに」
「簡単には教えません笑」
「えー……笑」
けいちゃんは知ってるのかな?今度タイミングあればけいちゃんに聞いてみような?なんてことあるごとにけいちゃんの事を考える私。
これもやめたい。
「…あ!じゃあ彼女いたことはある?」
「ないけど」
「意外。加藤くんモテそうなのに」
「そう言うAさんはどうなんです?」
「……小学生の頃からずっとけいちゃんが好きだったからいない」
「そんなに片想い拗らせてたのね?」
「何も言えない…」
ごもっともなことを言われて少し凹む。
薄々自分でも勘づいてたけどそんなに長い間けいちゃんに片想い拗らせてたってことに気づいて恋愛経験なさすぎるでしょ…と自分に呆れる。
それくらい、けいちゃんが好きで好きで堪らなかったんだ。
「…じゃあ、俺と付き合ってみる?」
「え…?」
私より背が高い加藤くん。
座っててもそれは変わらなくて少し高い所から見つめられる。
その瞳に、なんだか吸い込まれてしまいそうだった。
「どうせA、小山さんのこと忘れらんないでしょ」
「でもっ、なんで…?」
「多分だけど、小山さんと長谷川が一緒にいるところ見たら、A、その度に苦しくなるでしょ?
そんなの嫌じゃん」
話を聞いたのは昨日だったから、まだけいちゃんと愛菜が2人でいるところは見たことない。
でも、2人の姿を見て、また泣きそうになるのは簡単に予想がつく。
目の前に差し出された加藤くんのその言葉。
「小山さんの事忘れらんないなら、俺で忘れなよ」
少女漫画でしか聞いたことのないような台詞。
それって加藤くんを利用することになるんじゃないかって思う。
でも、加藤くんの瞳はさっきと同じ、真剣なまま、まっすぐ私の姿を捉えていて。
「…俺を利用しちゃうかもって考えてるでしょ?」
「……うん」
「いいよ。利用して」
私は、その言葉に甘えることにした。
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しげちゃん、
どうかお大事にしてください
自分を責めないでね。
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作者名:にゅすの さくら | 作成日時:2022年7月11日 12時