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「Aー。先風呂入っちゃいな」
「はーい」
私にはお兄ちゃんがいるけど、今は一人暮らしをしてて家にはいないから、こういうのは一番最初に回ってくる。
もう少し待って欲しい時は待ってもらうけど今日は何もないしそのままお風呂に入る。
もう9月だっていうのに残暑なのかなんなのか、とにかく暑いから湯船に浸かるのもそこそこにして、すくお風呂から上がる。
洗面台で髪の毛を乾かして、お母さんが買ってきてくれてたアイスを食べたらすぐに部屋に戻る。
リビングにいても別にそんなにすることがある訳でもないし笑
部屋に戻って、何しようかなぁって考えてると、ふと机の上に置いてある一冊の本が目に入る。
……あぁ、これけいちゃんに借りてたやつだ。
そういえばまだ最後まで読んでなかったっけ…と思って本を開くと案外読み終わってたから、もう最後まで読んじゃおうと思って椅子に座る。
読み進めていってだんだん集中し始めてきたころ、急に携帯が着信を知らせる。
急だったからびっくりして、しおりを挟まずに本を閉じてしまった。
その掛けてきてる人には申し訳ないけど、どこまで読んでたかだけを確認してから携帯の画面を見る。
……え?加藤くん?
思いもしなかった相手からの着信に少し戸惑うけど、結構長い時間放置してることを思い出して電話に出る。
「…もしもし、」
『もしもし、A、今大丈夫?』
「うん、大丈夫」
電話越しだからか、単純に夜だからか、いつも話す時とは少し違うように聞こえる加藤くんの声。
緊張する。
『LINE送ったけど見た?』
「え、LINEくれてた?ごめん、見れてない」
『大丈夫。だろうなと思って電話したから笑』
スピーカーにしてLINEの通知を確認するとたしかに加藤くんからメッセージが届いてた。
内容は『今日、大丈夫だった?』というものだった。
「LINE見たんだけど……『今日大丈夫だった?』ってどういうこと?」
『今日、長谷川から聞かされたでしょ?』
「うん」
『A、泣かなかったかなって』
そんな風に加藤くんに心配されてたんだって思うとどれだけ私が泣き虫…というかそんな風に見られてたのかを実感して少し恥ずかしくなる。
「うん、泣かなかった」
『そっか。よかった』
加藤くんと話すことはこれまであまりなかったけど、今電話越しに聞こえた声がいつも聞く声より少し優しさが含まれてたみたいでなんだか安心した。
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作者名:にゅすの さくら | 作成日時:2022年7月11日 12時