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紫side
「有岡。入るよ」
拗ねる有岡を宥めるのが、昔からの俺の役割だった。
でもさ、正直思ったんだ。
最後のは訂正するべきだって。
だから今日は、宥めるんじゃない。
しっかり、一人の仲間として叱る。
それが俺の出来る唯一の役割だと思うから。
橙「勝手に入ってくんなよ雄也」
あ、デジャブ。
声と言葉には変わり無かったけれど、1つだけ違った。
何だろうな、同級生だったってのに近づいちゃいけないような気がしてさ。
殺気を帯びてるって言うかさ。
でも、俺の役目だから。
「俺の話、聞けよ」
橙「なんで──」
「俺さ、本当はお前のこと嫌いだったんだ」
橙「何、言って」
「だってお前。苦しみとか人の裏とか、何も知らないような屈託のない目してたから」
橙「それとこれとは」
「だから関わらないって誓ってた。お前と家出をしたときも、お前が何をしようと俺は止めないって。そう決めてた」
橙「だから、何だよ……」
「所詮。こんなの、偽善に過ぎない」
俺は何を口にしたんだろう。
自分のことに思考が追い付かなくて、あー、俺も遂に年取ったなって溜め息混じりに考えた。
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作者名:柊 | 作成日時:2018年3月10日 23時