◆ ページ39
黄side
目が合った。
冷たく尖った視線で
でもほんの一瞬、現実から目を背けるように儚く笑って。
青「俺に聞かれちゃいけないことだった?」
強がっているのか
まだ話していた内容を知らないだけなのか。
どうせなら後者であってほしいと願っていた。
けれどそんな願いも、叶うことは許されない。
紫「伊野尾、これは──」
青「俺と知念が兄弟だって?知らないとでも思った?」
緑「そうじゃなくて」
青「俺はハッカーだよ?そんなバレバレの情報、表に出るのも時間の問題だって知ってたんだよきっと」
「伊野───」
青「俺が言わなかったのは信じてもらいたかったから。俺が四人を信じてから、裏切られるのが怖かったから」
強がっている様にしか聞こえないんだ。
どう見ても気持ちを汲み取ることのできない表情が、余りにも素直過ぎて。
青「薮達に知られる前に、本当は墓場まで隠し通すつもりだったんだけどね」
なんだよ。
俺らにだけは、心開いてるんじゃ無かったのかよ。
橙「伊野ちゃん」
青「大ちゃんはいいから」
恐らくその言葉だった。
その言葉で、溜まっていたものが外に漏れたんだ。
橙「伊野ちゃん、俺を頼ってよ!」
悲痛な叫びに胸が酷く軋んだ。
そんなこと言われると思ってもみなかっただろう。
多分有岡も、言うつもりでは無かったんだろうと思う。
だって目が、完全に泳いでいるから。
有岡は子供の顔をしていた。
最高の友達に苛められたときのような。
そんな屈辱と喪失感に満ちて、何処に怒りの矛先を向けて良いかも判らずに親に当たる子供のように。
有岡もまた、伊野尾に信頼されてなかったのかと思ったんだろう。
紫「有岡、落ち着けって」
橙「判んないよ俺の苦しみなんて。馬鹿馬鹿言われても苦しくなかったし悔しくなかったのは、皆が初めてだったんだよ!なんだか自分だけ認められてなかったんだなって、信頼されてるって自信過剰になってたのがアホみたいじゃん!」
青「大ちゃ」
橙「良いよ。勝手に死んでこいよ」
部屋に戻った有岡。
それを追い掛ける高木。
高木なら、任せられるかな。
緑「『勝手に死んでこい』か……」
あれは誰に向けられたものだったんだろうな。
呟く俺の頬を誰かが優しく拭き取ってくれたのは、間違いない。
それで俺は、久し振りに流れた渇いた涙が高校の時以来のものだったんだと気付かされた。
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作者名:柊 | 作成日時:2018年3月10日 23時