＃一年記念日 ページ34
『...阿部ちゃん、海外出張一年延びた』
阿『え！？』
『今さ、情勢的に海外出るの駄目な感じじゃん？
だから...一年延ばすことになったの』
阿『ああ〜、そういうことね。
まあ、それなら仕方ないか...とも思っちゃうな』
『そうだよね...
それに、蓮くんに申し訳なくてさ。
もう一年待たせることになって...』
阿『そうだね〜...とりあえず、めめには言っとくね』
『うん、お願いします...。
阿部ちゃん、体調にはくれぐれも気をつけてね』
阿『うん、Aも気をつけてね。
じゃあ、また』
「はぁぁぁぁぁぁぁぁ...」
電話を切ってから、大きなため息をついた。
新しい感染症が猛威を奮っていて、日本に帰れない、と聞かされたのは昨日の話。
...いや、帰れるのは帰れるんだけど、ウイルスを持ち帰ったら駄目だし、人手が足りてないから手伝ってほしいと言われたから、帰ろうという気にはなれなかった。
でも、無理矢理にでも帰るって言えばよかったと後悔した。
蓮くんと直接連絡を取らなくなって、もうすぐ一年が経つ。
海外に来て、蓮くんに無理させてるのに。
更に一年延ばすとなると、蓮くんはどんな反応をするのだろうか。
「...蓮くん、寂しいよ」
自分から言い出したことなのに、情けないなぁ...。
.
.
仕事から帰って来て家のポストを見ると、分厚い封筒が入っていた。
裏返してみると、差出人は目黒蓮と書いてある。
そして、配達日が指定されていた。
その日は、1年記念日で、まさに今日だった。
リビングに行き封を開けると、手紙と写真が入っていた。
Aへ
久しぶり、だね。
確認だけど、直接連絡って電話したりLINEするのはダメってことだよね？
なら、手紙はいいよね。
ってことで、初めてAに手紙を書きます。
...と言っても、第一印象書いたりとかはありきたりすぎるから、Aは知らないだろうなってことを書いておこうかな
Aを空港で送った時、Aは俺の心配ばっかりしてくれてたけど、一番不安なのは間違いなくAだったよね。
Aは気づいてなかったと思うけど、抱きしめた時、Aの体が震えてたんだよね。
俺、どうにかしてAの不安を取ってあげたくて、ちゅーともう一回ぎゅーしたんだよ
...まあ、俺がしたいと思ったからしたのもあるんだけど。笑
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作者名：こようぃん
| 作成日時：2020年11月15日 14時
