1001号室、あなたの隣【黒】 (ページ3)

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＃ページ3

阿「まあ、お隣さんも色々と事情があるんじゃない？」

多分、そう考えるのがベストなんだよね。

「...そうだよね、そう思っておく」

阿「ね、海鮮丼きたし、食べよう」

「いただきます」

阿「いただきまーす」

「ん～美味しい！」

阿「ここの海鮮丼は何回来ても飽きないね」

「ね！幸せ～...」

海鮮丼は美味しいし、店長さんは優しそうな人。

海鮮の店、って言ったらここしか思いつかないくらいだなぁ...

阿「奢るよ」

阿部ちゃんの口から奢る、なんて初めて出てきた。
それに、私が奢ったことなんてないのに。

「え！？なんで？ちゃんと払うよ」

阿「今回は俺の仕事の関係でずっと遊べなかったし...せめてもの償い。ね？」

「でも...」

それは、阿部ちゃんが忙しくなってきたからであって、阿部ちゃんが悪いわけじゃない。

なのに、奢ってもらうのは申し訳なさすぎる。

阿「Aは奢られてて。それでいいの」

「...じゃあ、お願いしてもいい？」

阿「うん、そうして」

「私、先に出てるね」

外に出ると風が吹いて少し寒かったけど、これから少しずつ暖かくなっていく。

冬は終わり、春がやってくる季節。

...そして、出会いと、別れの季節でもある。

阿「お待たせ、行こっか」

「うん、行こう」

.

帰り道、阿部ちゃんに話さなければいけないことを思い出した。

「ね、阿部ちゃん」

阿「ん？」

「あのね、仕事の関係で...
海外に行くことになるかもしれない」

阿「え」

「確実ではないよ？
それに、いつ行くかも分からない。
もしかしたら人が変わって行かないかもしれないし。」

本音を言うと、行きたくないんだけどな。

英語は中学レベルに達しているのかすら分からない。
なのに、海外なんて...私にはハードルが高すぎる。

阿「...それは、どのくらいの期間？」

「3年くらい、とは言われてるけど。
詳しいことは私にも分かんない」

阿「そっか～...3年かぁ...」

「うん、なんか...ごめんね？
もし海外行くってなったらずっと会えなくなるし」

阿部ちゃんと会えなくなるなんて、辛いしさ悲しいなぁ。
月に1回程度のお出かけは、心のオアシスだったのに。

阿「ま、また何かあったら言って」

「うん」

その日は、そこで解散となった。