will9 ページ9
自身が背もたれにしていたソファにぽすり、と優しくりこを降ろせば、彼女はまだ耳を手で覆い被せたままだった。
んー、編集途中だけどまあ良いか。
頑なに耳を守っているりこにちょいちょい、と手を離すように合図した。守るものがなくなった耳にパソコンに繋いだヘッドホンを当ててやれば、流れてくる音楽で雷の音は聞こえなくなったらしく、流していた涙も落ち着き彼女は少しだけ安堵の表情を見せた。
する事もなくなり手持ち無沙汰になり、一応ブレイカーの確認でもしてくるかと立ち上がろうとすればふくの裾を引っ張られた。
「…どした?」
目を合わせるようにゆっくりと問いかければ、視線をそらしていたりこが口を開いた。
『………でき、れば、側にいて欲しいっ、』
好きな相手にこんな事を言われて離れるやつがいるだろうか、いるわけが無いだろう。
「そんな心配そうな顔するなって、ちゃんと隣りにいるよ。」
そう言って手を差しだせば、りこはおずおずと俺の手をとった。ここからは自分の理性との戦いである。
…今までのこんな日はどうやって過ごしていたんだろう。きっとひとり、泣きながら過ごしていたに違いない。
安心したのか、いつの間にか眠ってしまった彼女からヘッドホンを取り、きれいなその顔を眺めた。
ソファで横になっているりこを見ると、ここに連れてきた日、このソファに彼女を押し倒したことを思い出してしまった。あの時手を出していたら取り返しの付かないことになっていただろう。
懐かしいな、もう少しでこの奇妙な生活が始まってから約半年が経とうとしている。
最初の頃、何も頼ってこずに全て自分の中だけで片付けてしまっていたりこが、こんなにも俺に頼るようになってくれた。
俺は、ちゃんとりこの役に立ててる?君を、救えている?
今までの苦しみなんて忘れて、りこには笑顔でいてほしい。ありきたりかもしれないけど、君には悲しい顔よりも笑った顔が似合うから。
「……幸せになってよ」
どうやら自覚はなかったけど、俺は大分りこの事が好きらしい。
ぽつりと漏れた俺の思いは、眠っている彼女には聞こえていないだろう。
例え、君が幸せな時隣にいる相手が俺じゃなくても、今は、今だけでいいから、俺に隣にいる資格をください。
393人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「歌い手」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
羅涙冬。~らるふ~ - 更新待ってます!ゆっくりでいいので頑張ってください!応援してます! (2018年8月9日 16時) (レス) id: 5555e1981a (このIDを非表示/違反報告)
ガルボ(プロフ) - 凪咲さん» コメントありがとうございます! これからも応援是非宜しくお願いします(*´∀`) (2017年10月2日 23時) (レス) id: 490bebaed7 (このIDを非表示/違反報告)
凪咲 - めちゃくちゃ面白いです!頑張ってください! (2017年10月1日 13時) (レス) id: 6d1da23217 (このIDを非表示/違反報告)
ガルボ(プロフ) - 亜麻都さん» ありがとうございます!! これからも楽しんでもらえるように頑張ります(*´∀`)!! (2017年9月24日 23時) (レス) id: 490bebaed7 (このIDを非表示/違反報告)
亜麻都(プロフ) - 続編おめでとうございます!!!!これからも楽しみにしてます!!!!更新頑張ってください!!!!ヽ(・∀・)ノ (2017年9月24日 13時) (レス) id: 4c7f3da984 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ニナ | 作成日時:2017年9月24日 1時