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ぐいぐい迫る綺麗な顔
なんなら、天井の白色灯を背負って影になった顔が迫力を増す。
……俺は知っている、森本慎太郎という男が、存外頑固であるということを。
そして、彼がどんな苦労をして、不可抗力の痛みで心を耕して来たのかも。
俺はたろ君を心から尊敬している。
俺も、たろ君のように折れない心を持ちたい。
…だからこそ、彼を呼び捨てすることに戸惑う。
呼称をつけずに、尊敬する彼を呼ぶなんて…
まだ、たろ君の隣に並べる俺になれていないのに。
きっとA代表に入って、それで…やっと……と思っていた。
「…A？」
くぅん……
鳴き声が聞こえてきそうな、心もとない表情が、俺の僅かな庇護欲を誘う。
流石、月9俳優……！
その顔は、たろ君…ずるいよ…
大きな目が零れそうだよ…
そもそも、たろ君って呼ぶのだって最初は勇気がいった。
「たろ君じゃだめ？」
「ダメ。」
あー…完璧に頑固モードだ。
たろ君の肩に乗ったハートも、こころなしか角ばっていて硬そうに見える…。
持ち主の気持ちで形変わる機能あんのか…
あのね、たろ君
「俺、たろ君を尊敬しています。」
「…！」
ピタリとくっつく体はそのまま。
たろ君は俺をじぃっと見据えている。
スタッフさんも減り始め、僅かな音が廊下から聞こえてくるばかり。
静かな部屋に、俺の声は思った以上に重たく落ちた。
「その心の強さ、俺にも欲しいです。」
たろ君の目が、キョロキョロと彷徨い始める。
暖かさを分け合っていた肩が離れる。
だからね
「俺が、たろ君に負けない強い心を持てるようになって、隣に並べるようになったら…。」
なんて、思ってるんだけど…ね……
「それって、いつよ。」
「…いつ…かな。」
「じゃあ、いやですー。今、お願いしますー。」
よいしょ。
自分の体を起こして、当たり前のように俺の方にも手をのばす彼は優しい。
俺、サッカー選手だよ、大丈夫だよって思うけど、
彼には、俺が運動できるから、とか関係ないんだよな。
優しさの塊。
ねぇ、たろ君…
「どうしてそんなに…「慎太郎が名前で呼んで欲しがるのかって？」」
うぉ…！？
ビュン…ッ
青い塊が俺とたろ君の間に滑り込んでピタリととまった。
少し掠れた声、
まだドアノブに手を掛けたままの樹君が、此方を見ていた。
樹、おかえりー。
たろ君は、何事もなかったかのように振り返る。
…！
たろ君の大きな掌が、今度は俺の手をぎゅうと握って離れていった。
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venjamin(プロフ) - はむはむさん» はむはむさん、コメントありがとうございます。ありがとうございます、恐縮です…！遅筆ですが、また覗きに来て下さい (2023年1月7日 18時) (
レス) id: d12149b604 (このIDを非表示/違反報告)
はむはむ(プロフ) - こんにちは、はむはむです。めちゃくちゃ面白くて一気に読んでしまいました！更新頑張ってください(^^) (2022年8月9日 21時) (レス) id: 2b371b2a8f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：venjamin | 作成日時：2022年2月5日 16時
