Story 54 ページ6
…北斗さんは、本気で生きたがっていました。
消えたいと願ったことを後悔して、震えていたんです。
「北斗さんの話を、じっくり聞いてあげて下さい。」
滝沢さんは、驚くでもなく、難しい顔をするのでもなく。
私の願いをじっと聞いていた。
…失礼ですが、Aさん
「…北斗が消えないことと…あなたには何の関係が…？」
「……っ。」
冷たい声に、息が詰まる
ドクン
彼らと共にある未来を選べない貴方に、北斗の進退は関係ないでしょう。
先程までが嘘のように、表情をなくした滝沢さんの顔が、私に語りかける。
その通りだ。
反論の余地はない。これっぽっちも。
北斗さんが消えてしまおうが、消えなかろうが
……もう彼らと会えない私にとっては、今日がお別れの日なんだから。
貴方の言うことは本当なのでしょう。
彼らの報告書にも、繰り返し書かれていましたし…
つまり、
「北斗を助けて…何かしたい、ということですか？」
私は…何かしたいの……？
SixTONESが6人でいられたらそれで良いと思った。
…それで…
…それ、から………
「…6人が…これからも、一緒にいられれば、それで……。」
ただ、6人で笑っていてくれたらと。
彼らが悲しい顔をするのが見たくなくて
「もう、会わないのに…変です、かね……。」
笑いたくもないのに、口をついてでるのはハハハ…と鳴るから笑い
自分は関係ないのに、
自分は確認できない未来なのに、
…誰かの未来を変えたいなんて、なんて強いエゴ…身勝手だ。
「もし、何かして下さると言うなら…北斗さんを助けてください。それ以外に願いはありません。」
……これで、私は最強にワガママな女だ。
じっと滝沢さんを見返すと、やれやれといった表情で小さく息を吐き出した。
「…本気ですか？」
「本気です。」私、わがままなんです。
…はぁーー……、
いよいよ、滝沢さんのため息が深くなった。
「…北斗に話を聞いてみます。」
「よろしくお願いします。」
試すようなことを言って、すみませんでした。本気なんですね…。
力なく笑う滝沢さんに頭を下げた。
ポチャ…
六本の化粧水は、丁寧にアタッシュケースに入れられた。
小さな冠の載った小瓶も、そっと布に包まれた。
カチリ
滝沢さんがケースを閉めるその瞬間まで、
彼らが入った美しいボトルをこの目に焼き付けた。
口々に私を呼ぶ彼らの声に
聞こえないふりをして…
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 395人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
venjamin(プロフ) - アンケートにご協力頂いた皆様、ありがとうございました。びゅーね君の枝分かれ作品となる「私の好きな人」同僚メイン には、樹さんに3人目として登場してもらおうと思います。 (2021年11月14日 1時) (
レス) id: 221b5a88eb (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：venjamin | 作成日時：2021年8月30日 2時
