Story 52 ページ4
Aさん、
「彼らは、どうでしたか。」
貴女とどんな時をすごしたのか、教えて貰えませんか。
滝沢さんは、一度の恫喝で6人を化粧水の姿に戻せる人。
そんなことを忘れてしまいそうな優しい声に、
促されるように動き出した私の口は、彼らとの思い出を流暢に語り始めた。
「ランチの支度をしてくれてー…」
机の上に置かれたままの、七色のカップ
「6人とコンビニにも行きました。ツリーがー…」
聞こえない6人の笑い声
「餃子の皮も、たくさん…破れて……っ…」
振り返ると、ソファに並ぶ6色のボトル
楽しかったのに、
沢山の笑顔を貰ったのに
耳を傾けてくれる滝沢さんが、背景に滲む
なんで、泣けるんだろう………
「っぁ、あれ、ごめんなさい…っ」
思い出を語る筈の口から出るのは、
不器用に音をころした、醜い嗚咽だけ。
＊
SixTONESを想って流す涙を、止めよう隠そうと必死になる彼女は、所謂「聞き分けの良い大人」だ。
自分の心の歪みを知りながら、
人の為に笑える子なんだろう。
小さくしゃくりあげる肩に手を伸ばすけれど、
サラリと避けられてしまった。
…。
慰めてほしいわけじゃ、ないってことか。
「悲しい思い出になるのでしょうか。」
過ぎていった楽しい時間を回想して涙する。
それは、
彼女の中で
彼らが過去になったと
……SixTONESは、過去になった、と
そういうことで。
きっと、
未だ顔を伏せる彼女は、
思い出と言う言葉を否定しない。
ふるふると髪を揺らし、顔を上げた彼女はぎこちなく笑った。
「いいえ、素敵な思い出です。」
ギシリ
「どう、して……」
痛んだ心が、考えるよりも先に声を発した。
「私には、6人を支える力がありません。」
ジェシーさんから聞いたんです、6人でいたいと。
私には…今の仕事では……とても、無理、です。
だんだん弱まる語気から
彼女の想いが、悔しさが、伝わる。
…あぁ、
間違いなく、彼女も共にあることを望んでいる。
諦めるのは、早いか。
＿＿ねぇ、お姉さん
俺も泣きたいのに、涙が出ないよ＿＿
＿＿6人で居る…
もうそれだけじゃ満足できないよ、おねーさん＿＿
＿＿貴方じゃなきゃ嫌だって
言葉にすることも、できない＿＿
＿＿泣かないで、泣かないで…＿＿
＿＿…俺を助けてくれた貴方に、
触れられないよ…Aさん……＿＿
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venjamin(プロフ) - アンケートにご協力頂いた皆様、ありがとうございました。びゅーね君の枝分かれ作品となる「私の好きな人」同僚メイン には、樹さんに3人目として登場してもらおうと思います。 (2021年11月14日 1時) (
レス) id: 221b5a88eb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：venjamin | 作成日時：2021年8月30日 2時
