形勢逆転 ページ33
俺と翔くんは、一瞬にして動きが止まった。
「−めん」
やっぱりかずがしゃべっている。
「かず?何?」
口元の袋をどけて、耳を近づける。
少しの間があった後、かずの口から聞こえてきたのは…
「ごめん」
初めてはっきり聞くかずの声。言葉。
こんなこと、言わせたくなかった。
「なんで?!何が?!」
気が付けば俺はかずに向かって怒鳴っていた。
「ちょっと智くん!」
翔くんの声が聞こえたけど、止まらない。
「何のごめんなの?!何に対しての?!」
悲しいのに、言わせてしまった自分が悔しいのに、かずを攻めてしまう。
「どうして?!俺は何も「智くん!!」
声と同時に、頬に痛みが走った。
翔くんが叩いたのだと気が付くのにしばらく時間がかかった。
「智くん!かずくんがしゃべったんだよ?初めて自分の気持ちを言葉で伝えてくれたんだよ?」
まだ痛む頬を押さえながら翔くんの目を見ると、悲しみと、信じられないという色が見えた。
「これは智くんに伝えたいって思ったから、言葉として出てきたんじゃないの?それなのに、それを否定しちゃったら、かずくん、また話せなくなっちゃうよ…」
だんだん、自分のしたことの重大さを感じてきた。
そうだ…やっと俺に気持ちを伝えてくれたんだ…
今まで表情にもあまり出さなかったのに…
「かず…ごめん…」
吐き気が止まったのか、苦しそうな様子はなかったけど、明らかに俺から顔を背けている。
「かず、いきなり怒鳴ったりしてごめん。俺に言いたかったんだよな?」
かずの肩に、そっと触れる。
けれどその瞬間、びくっと身震いして俺から離れ、自分の肩を抱いた。
「かず…」
その行為がショックで、俺も出した手をすぐに引っ込める。
「かずくん、智くん本当に怒ってるんじゃないから。大丈夫だよ」
翔くんも優しく声をかけてくれるけれど、顔を腕にうずめてしまった。
その姿が、ますます自分の中に引きこもってしまったように見えて、思わず涙か零れ落ちる。
しかも、俺のせいで…
「智くん、今はひとまず体のほう処置するから、ちょっと待ってて」
それから俺は、てきぱきとかずの世話をする翔くんをぼーっと見ていた。
いつもと形勢逆転。かずは翔くんに触られてもなにも嫌がるそぶりを見せなくなっていた。
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ohmiya373sk(プロフ) - 更新ありがとうございます!! 話が着々と進んでますね…!! お母さんを見つめるにのちゃん 、過去も 益々気になります(^ ^) 更新頑張って下さい! (2015年1月27日 22時) (レス) id: 07fd8f852a (このIDを非表示/違反報告)
みっちょん(プロフ) - にじいろえんぴつさん» にじいろえんぴつさん!すぐにお返事できなくてごめんなさい!!お久しぶりです!(^O^)かずくんも、大野くんも頑張ってくれました!今年も是非よろしくお願いしますm(_ _)m (2015年1月27日 2時) (レス) id: 5d381b2641 (このIDを非表示/違反報告)
にじいろえんぴつ(プロフ) - みっちょんさん、お久しぶりです、えんぴつですー!年末年始が落ち着いたので、覗いたらお話が追加されてて、飛び上がりました。和くんの公園デビュー、大野さんよく引っ張ってくれた〜!と感動してます。大きな進歩!みっちょんさん、今年も応援させてください(ぺこり) (2015年1月4日 11時) (レス) id: ed6b40fa96 (このIDを非表示/違反報告)
みっちょん(プロフ) - エミーノさん» そうですね、、、ゆっくりゆっくりかずくんも変化見守ってあげてくださいm(_ _)m (2015年1月1日 2時) (レス) id: 5d381b2641 (このIDを非表示/違反報告)
みっちょん(プロフ) - ohmiya373skさん» そうですね、完全に萌え袖状態です(´ω`)いつもと違う智くんにキュンとしてしまいますね。。ありがとうございます! (2015年1月1日 2時) (レス) id: 5d381b2641 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みっちょん | 作成日時:2013年9月19日 0時