声を忘れた君 Ｏ×Ｎ2

手 ページ22

かずをソファに寝かせて、俺は頭のほうの床に座る。

すると毛布の中から手を伸ばしてきた。

俺はその手を握りしめる。

いつも、どこかひんやりとしている手が今はとても熱い。

それでも、いつもより強い力で握りかえしてくる。

「ちょっと寝ようね。熱下げないと」

そういって頭をなでるけれど、かずは目を閉じようとしない。

潤んだ目を俺に向けて、時々しんどそうに眉をしかめる。

さっきまで寝てたから、眠たくないのかな。

頭をなでるのはやめて、おなかの上に手を置き、一定の間隔でぽん、ぽんとしてあげる。

すると、眠くなってきたのか、瞼が落ちてくるのを必死に抑えていたけれど、

やっと睡魔に負けて目を閉じた。

その寝息は、いつもみたいに気持ちよさそうにとはいかないけれど、落ち着いてはいる。

手は、俺の手を握ったままだった。

寝たからか力は幾分か弱くなったけれど、まだ離していい状態ではない。

俺はその手の上からもう片方の手を重ねて、かずの手を包み込んだ。


かずの手って、ぷにぷにしてるのにちっちゃい。

俺の手が大きいってこともあるんだろうけれど、すっぽり収まってしまう。

起こさないように気を付けながら、親指で手の甲を撫でるように触る。


次第に、より深い眠りに落ちたのか、和の俺の手を握る力が緩んだ。

その隙を見計らって、そっと手をはずし、布団の中に入れてあげる。

ちょっと身動きをしてため息をついたけれど、起きることなく眠り続けた。


意外とぐっすり眠れてるみたいだから、早めに治るかなこの時はのんきに思っていたけれど、
かずの体力のなさをなめていたことに、後から気付かされた。

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