八羽 ページ27
「……ありがとうございました、陽雅先輩」
「ううん、こちらこそ」
ふと、天国の善野さんが今の俺たちを見たら、妹さんを取られたと思って怒るかな、と考えてしまい、少し含み笑いをする。
すると、それを見ていた明日華ちゃんが、頭上にハテナマークを浮かべた。
墓参りも終わり、さあ帰ろう、と出口に向かって歩こうとした、その時だった。
ふと、ある一つの墓が目に付いた。
この墓地は山の斜面に作られていて、今俺たちがいるのはその一番上辺りの見晴らしの良い場所。
その墓は、俺たちがいる場所よりも少し下にあり、直ぐ横は森だ。
墓の向きもあって名前は見えないが、少し不自然に見えた。
なんだか嫌な予感がする。
あの墓に近寄ってはいけないような……。
「………ごめん、明日華ちゃん、先、帰っといて」
とりあえず、明日華ちゃんには先に帰って貰おう。
「…え、あ、分かりました。陽雅先輩、お気を付けて」
「うん、またね、明日華ちゃん」
そう言って俺は直ぐにその墓に向かった。
近寄る度に、頭の中で警報が鳴る。
けれどそんなもの御構い無しに俺は墓の側に行った。
よく見ると、益々不自然な墓だ。
墓石は新しいが、余り、手入れをされた様子が無いし、花瓶に花は刺さっておらず、枯れた榊だけが風に揺られていた。
墓の正面に着き、まだ名前は見ずに、少しの間目を閉じた。
何時の間にかカラスがこの墓地に集まっていたらしく、鳴き声がやけに騒がしい。
意を決して、俺は目を開けた。
「……嘘、だろ？」
刻まれた名前を見て、思わず固まる。
だんだん視界が滲んでくるので、手で拭って、もう一度、その名前を確認をした。
『夜光家ノ墓』
無機質に刻まれたその名前が、俺に現実を突きつけた。
一瞬で頭が真っ白になる。
涙がとめどなく溢れ、もう何もはっきりと見えなかった。
「…ウワァァァァ！！！」
無我夢中で、横の森に飛び込んだ。
もう自分でも何がなんだか分からなかった。
ただ頭の中で、現実逃避の言葉だけが浮かんでくる。
_____嘘だ、嘘だ！
アイツが、Aが死ぬなんて！
絶対に、嘘だ！
俺は、走り続けた。
全力で走った。
溢れてくる涙で周りは何も見えなかった。
「……ッアアアア！！」
ひたすら叫び、ひたすら走った。
ふと、身体が宙に浮き、次の瞬間には俺の身体は落下していた。
俺は崖から落ちていたんだ。
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もくもく@鬼灯なぅ - みーさん» あ、本当ですね！ご指摘ありがとうございます！ (2015年11月7日 1時) (
レス) id: 4a5e4162ae (このIDを非表示/違反報告)
みー(プロフ) - 報告書二枚目の、近所の大学生と若い警官数名が犠牲になった事件で、夜行が夜光になっています。故意でしたら、すみません。 読んでいてとても引き込まれる話で、面白いです。私もこんな風にかければなあ笑 (2015年11月4日 20時) (レス) id: bcd7e9b2cd (このIDを非表示/違反報告)
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