資料室で ページ43
『失礼しまーす……』
この時間の資料室は入ったことがない。病院はいつでも入れるように、鍵は空いている。
トラファルガーさんがいると思い、声を掛けたが返事はない。
資料室の中に入り、本棚の間を覗きながら歩く。
あ、いた。
スゴい集中力。
少し本棚に寄り掛かり、医学書を読んでいた。
私が彼を見ていたら、トラファルガーさんはこちらに気付いた。
｢終わったのか。｣
『え、はい。』
｢お疲れさん。｣
『あ、いいえ。トラファルガーさんこそ。』
｢この世界の方が医学が進んでる。興味深い事ばかりだ。面白い。｣
『いっぱい待たせてしまって、すいません。明日も仕事あるのに』
｢予想より早かった。気にすんな。｣
こういう会話がこの人とできると思っていなかったから、正直驚いた。
勝手に待っていたのはトラファルガーさんなのに、毒気を抜かれた。
俺様気質かと思いきや、意外にも優しい言葉が返ってきた。
本をパタンと閉じると、気を緩めるように溜め息が聞こえてきた。
｢帰るか。腹が減った。｣
『やっぱり食べてなかったんですね』
｢やっぱりって、何だ。｣
『食堂は閉まっている時間だったし、売店もお金がいるし。』
｢心配だったか？｣
『…！！違います…！』
｢ククッ！そんなに慌てんな。｣
『違うって……！』
なぜか顔が、熱くなった。
心の内を見透かされたみたいで、居心地が悪くなった。
だけど、私の気持ちに反してトラファルガーさんは、穏やかな表情になった。
｢成る程。ユースタス屋が過保護になるわけだ。｣
『え、キッドが何？』
｢……無性に腹立つ反応だ。ユースタス屋が気になってんのか。｣
『トラファルガーさんには関係ないですから。』
｢気の強いヤツだ。あと、表情がコロコロ変わる。｣
『分析はいいです。』
｢俺に平気で溜め息つく女も初めてだ。｣
『おモテになりそうですもんね…。』
｢女に不自由したことはねぇな。｣
『…なら、私に構わないでくれます？』
｢お前は“鍵”だ。大事にしないとな。｣
『……本当に、帰りたいんですね。』
｢勿論だ。待たせてる仲間もいる。やらなきゃならねェ事もあるんだ。｣
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 108人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
弱音ハクはオレの嫁(プロフ) - 面白かったです！キッドの小説は少ないので見つけられると嬉しいです！ (2021年4月12日 15時) (
レス) id: ccc8b6f347 (このIDを非表示/違反報告)
心遥 - お大事に〜！！！！！ (2016年5月17日 16時) (レス) id: 24e2ac7908 (このIDを非表示/違反報告)
紅葉＊(プロフ) - 心遥さん» まだ良くなってません(゜ロ゜;久しぶりに風邪引きました(>_<) (2016年5月15日 7時) (レス) id: 02f81fdce9 (このIDを非表示/違反報告)
心遥 - 風邪？！？！大丈夫ですか？！ (2016年5月13日 17時) (レス) id: 24e2ac7908 (このIDを非表示/違反報告)
紅葉＊(プロフ) - 心遥さん» 今風邪引いてて更新が遅くなりそうですが、よろしくお願いします(;ﾟ∇ﾟ) (2016年5月12日 13時) (レス) id: 02f81fdce9 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：紅葉＊ | 作成日時：2016年3月24日 5時
