一寸先は闇【名探偵コナン】 (ページ9)

今日:4 hit、昨日:1 hit、合計:36,525 hit

・9話ページ9

・

「A。」

名前を呼ばれるだけで嬉しかった。

でも彼は私を抱いているとき以外、
私の名前を呼ばない。

あぁ、だからこれは夢か。
と薔薇を持っていつものような黒を基調とした服に身を纏った彼を見て思った。

私が警察学校に通い始めてまだ一ヶ月だ。
たった一ヶ月会ってないだけだ。
それなのに、夢の中で彼に会えたことが奇跡のように感じた。

彼との約束の日まで後1週間。
一体私の身が持つのだろうか。

～～～～～～～～～～～～

あれは私が高校一年生の時の夏休み。

お花が大好きだった私はよく
お花屋さんに行ってたくさんの花に触れ合った。

でもただの高校生。
お小遣いでやりくりしている中で
たくさんのお花を買うことは出来なかった。
毎日のように行きつけの花屋に行っては
薔薇を1輪だけ買って帰った。

その薔薇をプリザーブドフラワーにする。
そして、そのプリザーブドフラワーを
部屋に飾った。

私の両親はその時からアメリカに住んでるから
家は私だけの城だった。

壁を特別な加工でガラスのような素材にしてもらって、普通の壁とガラスの間にたくさんの
プリザーブドフラワーを詰めていけるようにしてもらった。

私の部屋の壁はいつも鮮やかだった。
いつも薔薇の香りがした。

そんなある日
花屋さんのお姉さんが私に言った。

「Aちゃんは薔薇が1番好きなの？」

毎日色々な花を見ても結局買うのは薔薇だった。

「ええ。そうなんだと思います。」

「じゃあ薔薇の花言葉は知ってる？」

「愛情とか、貴方を愛していますとか
　ですよね？」

どこで聞いたかは覚えていなかったけれど
確かこんな感じの花言葉だったと思う。

「うん、それも正解。
　でも今Aちゃんが言ったのは
　赤い薔薇の花言葉。」

実はね…

それから店員さんは色々な事を教えてくれた。

薔薇の花言葉たくさんあるらしい。
色によっても花言葉は違うし
本数によっても違うそうだ。

「知らなかったです。」

そう微笑んで
教えてくれてありがとうございます。
と付け足す。

「いいのよー
　今日はどれにする？」

「じゃあこれで。」

私が選んだのは青い1輪の薔薇。

青い薔薇の花言葉は、奇跡。
1輪の薔薇の花言葉は、一目惚れ。

その帰り道だった。

すっごく高そうな車、確かポルシェ
とかいう名前だったか。

運転席には誰もいなくて
助手席に座っている人と僅かに目があった気がした。