2話 信じがたい ページ2
〃
それからしばらく時間は経過したものの、状況はそこまで変わっていない。Aが俺の隣を歩いているのはさっきと同じだ。
さっきと違うことはと言うと、今俺たちがいる場所が通学路じゃなくて、二年の教室へ続く廊下だということ。
「今年は同じクラスだね、蘭たん」
そして、Aの機嫌がいいことである。
その理由はほぼ間違いなく、さっき昇降口のところで見たクラス分けの貼り紙が原因だろう。
「蘭たんと同じクラスになるのいつぶりだろ。小学校の時?」
「そんな前だっけ」
「だって中学の時一緒だった記憶ないよ。去年だってクラス違うし」
そう言われて俺も思い返してみる。
確かに、中学の時クラスにAがいた記憶はない。ちょくちょく教科書忘れた!とか言ってこっちには来てたけど。
「……じゃあAの言う通り小学校以来か」
「ね!ほら、やっぱそうでしょ」
またドヤ顔を見せつけられ若干癪に障ったが、こんなことで一々張り合うのもアホらしいなという気持ちが勝って、一瞬だけ感じた小さな苛立ちが掻き消えていく。
そんな俺をよそに、Aは「それにさ、」と話を続けた。
「すぎるくんたちもみんな一緒のクラスだし!」
これってもう奇跡みたいなもんだよね、と笑顔を向けられて「……うん、まぁ……そうだね」と曖昧で素っ気ない返事をする。
正直俺も信じられない。全五クラスだった中学の時でさえ、全員同じ組になったことなんてなかった。高校に進学するとクラスの数は七つに増えて、一年の時はまあ予想通りバラバラ。
もしかしたら同じクラスになるかも、なんて淡い期待は見事に打ち砕かれたというわけである。
そういうこともあって、今年のクラス分けはそんなに期待していなかった。しかしその結果がこれだ。まさかのみんな同じクラスという結末。にわかには信じがたい話だ。
「嬉しくないの?」
Aが首を傾げ、顔を覗き込むようにしてそう聞いてくる。
「……いや、別に嬉しいとかそういうのは……」
まるで射抜くような真っ直ぐな視線に耐えられなくてそっと目を逸らした。
嬉しくない、と言えば嘘になる。けどそれをあまり口にはしたくない。
しかしAにはまぁ、お見通しのようで。
「えー、ほんとかなぁ?」
「…………」
「あはは!そんな照れなくてもいいのにー」
黙り込んだ俺に笑いながらそんなことを言うものだから、腹が立って頭を小突いてやった。
さっき叩かれたことへのちょっとした仕返し、という目的も込めて。
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