〜in無神家〜 ページ4
目が覚めると、見慣れない天井が目に入った。
身を起こすと、記憶にない部屋が広がっている。
見たことも無いような豪華でありながら調和のとれた部屋だった。
ふと気が付くと、近くの椅子に男性が腰を掛け本を読んでいる。
「あの…‥‥」
小さな声で声を掛けると、顔をあげてこちらを見た。
「目が覚めたか」
彼はパタンと本を閉じ、それを机に置くと立ち上がった。
「覚えているか？お前はこの屋敷の玄関に倒れていたのだが」
「いえ…なにも……」
そこでふと違和感を覚えた。
(何も…覚えていない…‥‥‥)
「どうかしたか？」
「あ‥‥‥‥‥私、その‥‥‥」
頭が混乱して、言葉が続かない。
(ここは何処？この人は誰？どうしてここに居るの？)
不思議と自分の事ははっきりと覚えていた。
最も、生い立ちなどではなく名前や年齢だけだが。
「私はどうしたんですか？」
自分でもよくわからない質問だが、問わずにはいられなかった。
「なんだ…？記憶がないのか？」
「そう…みたいです」」
その人は、少し驚いたようだったが、慌てたりせずに落ち着いて考え始めた。
「俺の名前はルキ、無神ルキだ。お前、自分の名前は思いだせるか？」
この人の名前はルキ。
そう心に刻みつけると、なぜか覚えている自分の名を名乗った。
「A、といいます。ルキさん」
「そうか、Aほかに覚えていることは？」
「年齢…と、あと‥‥‥‥あれ？分からない。何も…思いだせない…！」
気分が悪かった。
自分の事がわからない。何故か頭が割れるように痛く、思わず抑えた。
「私‥‥‥私は誰？何も、何も‥‥‥ッ…」
「おい、落ち着け。焦るな。一先ず年齢は？」
ルキさんは怖いほどに落ち着いていて、冷静に質問をする。
「17、です。」
「そうか、俺は18。一つ違いだが、下の弟たちはお前と同い年だな」
「え…？」
思わず驚いた。ルキさんはとてもじゃないが一つ違いには見えない、大人っぽい雰囲気がしたからだ。
「一先ず、思いだせないのなら無理をしなくていい。リビングに行こう」
「…あ、はい」
「立てるか？」
「大丈夫です」
厳しそうな人だったが、気遣ってくれているのは伝わってくる。
少しだけほっとして、私はルキさんについてリビングへと向かった。
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