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記憶 ページ13
帰り道、車内
少し遅れるらしいアズサとルキが居ない車内は、行よりも広く感じた。
「ユーマ、……コウは、何か用事があったの？」
私は、唯一一緒に返ってきたユーマに尋ねた。
「あ？コウ？……あいつは、仕事だ」
「仕事？――コウって何かやってるの？」
そう尋ねる私に、ユーマは呆れたような視線を向けた。
「何、お前知らねーの？……あいつの仕事はアイドルだぜ？
”この年代の女子でコウを知らねー奴がいるとは思わなかった”
ユーマの呆れたような言葉に、なぜか胸がドキリとする。
”知らなっかた”というその出来事によって、今居るこの空間全てから敵意の視線が向けられたような気がしたのだ。
「……ッ……カㇵ…ッ……」
喉が詰まったような悲鳴が出て、突然恐怖に襲われた。
急に頭痛がして、私は額を抑える。
何かが、おかしい。
「おい、A！……大丈夫か？」
ユーマが心配そうにこちらを覗き込んでいるのを見て、私は慌てて笑顔を作った。
「うん…多分、大丈夫」
「なんだよ…多分って」
呆れたようにユーマが言う。
「まだ青い顔してんぞ」
「うん……」
屋敷の玄関で別れるとき、ユーマはもう一度声を掛けてくれた。
私は弱弱しく頷くことしかできなくて、逆に心配させてしまうのが分かっていても……他に手だてがなかった。
「はぁ……ま、ゆっくり休めよ」
ユーマはそう、念を押して部屋へ向かった。
その背中を見届けて、私も自分の部屋へと足を向ける。
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