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四百話 ページ40






「――A、A…!」



善逸が、焦ったような声でAを呼ぶ。



「…」



応答は無い。


呼ばれた本人は、彼の方を見向きもしない。



「…頼むよ、向こうで横になったほうが良いって」


「…」


「カナヲちゃんも助かったんだ、きっと炭治郎だって…」



戻って来るから。そう言いかけた善逸だったが、その炭治郎の手を弱々しく握る彼女の手が情けないくらいに震えているのを見て口を噤む。



あれから。


カナヲが命を懸けて炭治郎に打ち込んだ薬が、背から生えていた触手を消滅させ、彼自身は意識を失った。


仰向けになった彼の四肢を、生き残った隊士達で押さえ込んでいるのが現状である。



胸を貫かれたカナヲも、一つ外れた所で治療を受けている。安静にしていれば命に別状は無いそうだ。



死なせるものかとカナヲを抱き締めていたAは、カナヲを隠に引き渡した時こそ必死の形相であったが、今は違う。


昏倒する炭治郎の胸部に突っ伏して、ずっと動かない。



(……苦しい音だ)



ピクリとも動かないAは傍から見れば死体のようだが、耳の良い善逸はしっかりと鼓動を聞き取っていた。


普段は儚く優しい音が聞こえて来るのに、今は不安と恐怖に彩られた不協和音を奏でている。


それこそ、肉親である禰豆子の音を上回るほどの。



「…」



さっき一度だけ、隠が炭治郎からAを引き剥がす事に成功した。


そんな時、切断された左手首の止血の最中、流れで気付いた新人らしき隠が素っ頓狂な声を上げたのだ。


「女ァ!?」と。


あの時は一時騒然とした。ほとんどの者が彼女は男だと思っていたから。


そうして無害な隠によって機密事項をすっぱ抜かれたAは、てっきり何かしら怒るのかと思いきや何の反応も示さなかった。


多分炭治郎が無事戻ってきて事態が落ち着いたら、その事実を知る者を片っ端から殴って回るだろう。Aならやりかねない。



しかし善逸、それでいいと思った。


もちろん理不尽な暴力を受けるであろう者達には土下座して回りたいが、彼女が元気になってくれるならそれでよかった。


"炭治郎が戻ってこれば"、もうそれでいいのだ。



(お前、炭治郎さぁ…早く起きてくれよ…禰豆子ちゃんずっと泣いてるし、Aなんも反応してくれなくてもう俺泣きそうなんだけど)



堅く瞳を閉じている戦友を、善逸は悲痛な面持ちで見据えていた。




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設定タグ:鬼滅の刃 , 竈門炭治郎 , 原作沿い   
作品ジャンル:アニメ
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名梨(プロフ) - あばんぎゃるどもふねこさん» 温かい言葉をありがとうございます…!ちなみに私の名前は名無しが元になってるので大丈夫です。ありがとうございます…! (2020年5月8日 9時) (レス) id: ecab760345 (このIDを非表示/違反報告)
あばんぎゃるどもふねこ - 名梨さん» いえいえ、私自身の意見なので。何をどうするかは名梨さんが決めることです。個人的な意見に耳を傾けて下さり有難うございます。ついでに言うと名梨さんの漢字間違えてました!なにやってんだって感じですね。申し訳ありませんでした! (2020年5月5日 10時) (レス) id: 9c2226ad75 (このIDを非表示/違反報告)
名梨(プロフ) - あばんぎゃるどもふねこさん» せめて朔と日は良い感じで終わらせたいので、どうぞ温かい目で見てやってください。 (2020年5月3日 20時) (レス) id: ecab760345 (このIDを非表示/違反報告)
名梨(プロフ) - あばんぎゃるどもふねこさん» コメントありがとうございます。申し訳ありません。私自身としては残しておきたかったんですが、色々あった末に消す事になりました。作品を好いてくださりありがとうございます。そして申し訳ありませんでした。 (2020年5月3日 20時) (レス) id: ecab760345 (このIDを非表示/違反報告)
あばんぎゃるどもふねこ - いやっふうう!!やあっと終わりましたね!無限城編!…で、重要なのはこの後ワニ先生がどういう流れにするのか、ですよね。まあ、予想だと続編は出ないと思いますが。新しくお話を作成されるのは喜ばしい事です。私ら一同楽しみにしておきます。 (2020年5月1日 19時) (レス) id: 9c2226ad75 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:名梨 | 作成日時:2020年3月8日 18時

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