三百九十六話 ページ36
「っ、……ぁ…」
かすれた、声とも言えない声が、Aの喉から漏れ出た。
「わあああッ!!禰豆子ちゃん!!!」
さっきの攻撃を冨岡は何とか避け、死傷者はでなかった。
しかしそれは、Aの目の前で激痛に耐える禰豆子がいなければの話だ。
年相応の綺麗な手は至る所が裂け、肘まで血が滴っている。
爪は全てが割れ、大半が痛々しく剥がれていた。
(…炭治郎、お前…)
やっと上体を起こせたAが愕然と炭治郎を見やる。
彼には禰豆子の手が見えていないようで、さらなる攻撃を繰り出した。
「ッ!!」
一方、迫りくる触手から避けながら、冨岡はふと疑問を抱く。
(何故禰豆子を殺さない?血の滴る肉が目の前にあると言うのに)
禰豆子に噛み付いた時に血の味を覚えてしまったのだから、今すぐに彼女に襲い掛かってもおかしくない。むしろそれが普通だ。
(それに寧塑寺も大量に出血しているはずだ。何故見向きもしない?)
炭治郎の傍らで、善逸や伊之助に向かう触手を弾き続けるAも、まともに動けないのだから良い餌になると言うのに。
今思えば炭治郎は、触手やら衝撃波やらで攻撃はしてくるものの、人を食おうとはしていない。
・
「ッぃ゛…」
疲労が最高潮に達しようとしている。
僅かに動きの鈍ってしまったAは、隙を突かれて左手を斬り付けられた。
ゴトンと、左手首から上が落ちる。
(ッ…どうする方法が見つからない…!!)
無くなった左手をもろともせずに、彼女は歯噛みした。
このままだと状況の打開は絶望的だ。
どうやって炭治郎の自我を引きずり出せばいいのか分からない。
日光も赫刀も効かないのだ、何としてでも炭治郎の自我を取り戻さなければならない。
(炭治郎、早く…)
動かす度に電流が走るように痛む右腕を動かし、炭治郎の胸倉を掴む。
(早く、帰ってきてくれ…!!)
・
233人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「鬼滅の刃」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
名梨(プロフ) - あばんぎゃるどもふねこさん» 温かい言葉をありがとうございます…!ちなみに私の名前は名無しが元になってるので大丈夫です。ありがとうございます…! (2020年5月8日 9時) (レス) id: ecab760345 (このIDを非表示/違反報告)
あばんぎゃるどもふねこ - 名梨さん» いえいえ、私自身の意見なので。何をどうするかは名梨さんが決めることです。個人的な意見に耳を傾けて下さり有難うございます。ついでに言うと名梨さんの漢字間違えてました!なにやってんだって感じですね。申し訳ありませんでした! (2020年5月5日 10時) (レス) id: 9c2226ad75 (このIDを非表示/違反報告)
名梨(プロフ) - あばんぎゃるどもふねこさん» せめて朔と日は良い感じで終わらせたいので、どうぞ温かい目で見てやってください。 (2020年5月3日 20時) (レス) id: ecab760345 (このIDを非表示/違反報告)
名梨(プロフ) - あばんぎゃるどもふねこさん» コメントありがとうございます。申し訳ありません。私自身としては残しておきたかったんですが、色々あった末に消す事になりました。作品を好いてくださりありがとうございます。そして申し訳ありませんでした。 (2020年5月3日 20時) (レス) id: ecab760345 (このIDを非表示/違反報告)
あばんぎゃるどもふねこ - いやっふうう!!やあっと終わりましたね!無限城編!…で、重要なのはこの後ワニ先生がどういう流れにするのか、ですよね。まあ、予想だと続編は出ないと思いますが。新しくお話を作成されるのは喜ばしい事です。私ら一同楽しみにしておきます。 (2020年5月1日 19時) (レス) id: 9c2226ad75 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:名梨 | 作成日時:2020年3月8日 18時