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三百六十六話 ページ4

寧塑寺Aはとても驚いていた。


いい年した師がウオンウオン泣いているのにも驚いているし、何より、彼の言った言葉にも驚いた。



「……俺が死んでようが関係ねぇ。お前にはこっち側に来てほしくないンだよ」



目元を真っ赤に腫らして、ズズッと鼻をすする。


それをAは何とも阿呆らしく口を開いて見上げた。



「いいか?こンな事恥ずかしくて一回しか言わないからよく聞けよ?」



Aの両肩を掴んで、彼は言った。



「俺はお前が大好きなンだ」



Aは両肩を掴まれて、自ずと変な顔になった。



「気でも狂いましたか」


「いや、俺は狂ってンのが普通だ」


「知ってます」



つむぐの瞳は翡翠色だった。Aの瞳は紅梅色だった。


多分、彼が人間だった頃は翡翠の瞳だったんだろう。



「…で、俺は思う訳だ」


「何を」


「俺だけじゃない」



「お前が大事だと思ってる奴ら全員、お前が大好きで大事なンだよ」



「…」



どこからか音がする。


Aは何気なく視線を落とした。そんな彼女につむぐは微笑んで見せる。



「ほら、もう一人は戻って来た」


「…伊黒さん」



彼の両目には引っ掻かれたような傷があって、きっと生き残ってももう目は見えない。


それでも戻ってきてくれたと思うと、炭治郎と戦う姿を見ると、妙な使命感に駆られた気がした。



「さぁどうする?お前はこのままおっ死ぬか、奴との戦いに戻るか」


「…」


「自分で決めろ」



とは言っているが、選択肢なんて一つしかないんだろう。


胡散臭い笑顔を浮かべるつむぐがその証拠。



「…大人しく死なせてはくれないんスね」


「俺の弟子なら最後の最後までやりきるだろ」


「性格悪くなりましたね」


「…え、マジで?」



ちょっと傷ついた表情のつむぐに意地の悪い笑顔で返し、Aは静かに深呼吸をした。


ちゃんと肺に空気が入って来る事すらも嬉しい。さっきまではまともに呼吸もできなかった。


多分、戻ったらまたそうなる。



「ふぅぅ…」



でも呼吸がなんだ。そんな事言ったら伊黒さんだって炭治郎だって同じだろう。



その時ふと、背中が押された。


驚いて目をやると困ったように微笑むつむぐが見える。



「門限は夜明けまでだ」



その言葉にAは可笑しくなって、つい口角が上がった。


あれだけ八時まに帰って来いとうるさかったくせにと、刀の柄を力強く握った。

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設定タグ:鬼滅の刃 , 竈門炭治郎 , 原作沿い   
作品ジャンル:アニメ
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名梨(プロフ) - あばんぎゃるどもふねこさん» 温かい言葉をありがとうございます…!ちなみに私の名前は名無しが元になってるので大丈夫です。ありがとうございます…! (2020年5月8日 9時) (レス) id: ecab760345 (このIDを非表示/違反報告)
あばんぎゃるどもふねこ - 名梨さん» いえいえ、私自身の意見なので。何をどうするかは名梨さんが決めることです。個人的な意見に耳を傾けて下さり有難うございます。ついでに言うと名梨さんの漢字間違えてました!なにやってんだって感じですね。申し訳ありませんでした! (2020年5月5日 10時) (レス) id: 9c2226ad75 (このIDを非表示/違反報告)
名梨(プロフ) - あばんぎゃるどもふねこさん» せめて朔と日は良い感じで終わらせたいので、どうぞ温かい目で見てやってください。 (2020年5月3日 20時) (レス) id: ecab760345 (このIDを非表示/違反報告)
名梨(プロフ) - あばんぎゃるどもふねこさん» コメントありがとうございます。申し訳ありません。私自身としては残しておきたかったんですが、色々あった末に消す事になりました。作品を好いてくださりありがとうございます。そして申し訳ありませんでした。 (2020年5月3日 20時) (レス) id: ecab760345 (このIDを非表示/違反報告)
あばんぎゃるどもふねこ - いやっふうう!!やあっと終わりましたね!無限城編!…で、重要なのはこの後ワニ先生がどういう流れにするのか、ですよね。まあ、予想だと続編は出ないと思いますが。新しくお話を作成されるのは喜ばしい事です。私ら一同楽しみにしておきます。 (2020年5月1日 19時) (レス) id: 9c2226ad75 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:名梨 | 作成日時:2020年3月8日 18時

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