三百九十話 ページ29
「ッ…」
Aは俯き、小さく震える。
「っぅ…くっ…」
堰を切ったように溢れ出す涙を必死にこらえた。
隠の人が寄り添ってくる。
だいじょうぶ。
受け止められてはいるから。
ただちょっと、受け入れるのは難しいってだけで。
(…勘弁してくれよ…)
下がる口角を何とか戻し、再び顔を上げた。
ちゃんと見ておかなくちゃならないと思った。
もう彼は生きていない。
笑わない。
怒らない。
泣かない。
あの安心できる声で、俺の名前を呼んでくれない。
そう思うと、一層大きくなった悲しみと寂しさに押し潰されそうだった。
誰だってそうだ。アイツはみんなに愛されてた。
今だから言える事だけど、俺もアイツが好きだった。
強い人とか、優しい人から死んでいく。
それは多分、残された人達が強くなるためなんだと思う。
そういうのを何度も繰り返して、この世は回ってる。
後を追おうだなん真似はしない。
でも、それでも、女々しいと笑えてくるくらい、寂しくて、悲しい。
今は泣いたっていいんじゃないか。
冨岡さんだって泣いてる。泣かない方が不謹慎だろうんきっとそうだ。
「…っ」
再度仰向けに倒れたAに、彼女に付いていた隠達も地面に座り込んだ。
・
それから数十秒も経ってなかった。
変わらず号泣していたAが、何かただならぬ気配を察して身体を起こす。
それに隠が「しッ、ししん、死んじゃいますよォ！！」と叫んだ。
「…」
出血は治まってきて、肌にこびりついていた血液も拭いてもらった。
色の無い世界の中心、ポツンと座っている炭治郎。死んだからなのか、彼の右目の膿みが引いていく。
しかしAにはそんな事どうでもよかった。
鋭い危機察知能力が、彼女の脳内に危険信号を送っている。
アイツは危険だ、離れろ、と。
「――…！？」
そして徐に炭治郎が顔を上げた。もう死んだはずの炭治郎がだ。
他にそれに気付いた者はおらず、Aだけが愕然としてそれを凝視していた。
ピクリと瞼が揺れ、ゆっくりとその瞳を見せる。
それを見たAは、全身の毛を逆立たせた。
役目を放棄した喉を叱咤し、叫ぶ。
「はな゛っ、れろ…！！！！」
もう一度光を灯すと思った赫灼はどこにもいない。
もう二度と見たくないと思った毒々しい紅梅色の双眸が、残酷に煌めいている。
鬼と化した友人は、酷く哀しく見えた。
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名梨(プロフ) - あばんぎゃるどもふねこさん» 温かい言葉をありがとうございます…！ちなみに私の名前は名無しが元になってるので大丈夫です。ありがとうございます…！ (2020年5月8日 9時) (
レス) id: ecab760345 (このIDを非表示/違反報告)
あばんぎゃるどもふねこ - 名梨さん» いえいえ、私自身の意見なので。何をどうするかは名梨さんが決めることです。個人的な意見に耳を傾けて下さり有難うございます。ついでに言うと名梨さんの漢字間違えてました！なにやってんだって感じですね。申し訳ありませんでした！ (2020年5月5日 10時) (レス) id: 9c2226ad75 (このIDを非表示/違反報告)
名梨(プロフ) - あばんぎゃるどもふねこさん» せめて朔と日は良い感じで終わらせたいので、どうぞ温かい目で見てやってください。 (2020年5月3日 20時) (レス) id: ecab760345 (このIDを非表示/違反報告)
名梨(プロフ) - あばんぎゃるどもふねこさん» コメントありがとうございます。申し訳ありません。私自身としては残しておきたかったんですが、色々あった末に消す事になりました。作品を好いてくださりありがとうございます。そして申し訳ありませんでした。 (2020年5月3日 20時) (レス) id: ecab760345 (このIDを非表示/違反報告)
あばんぎゃるどもふねこ - いやっふうう！！やあっと終わりましたね！無限城編！…で、重要なのはこの後ワニ先生がどういう流れにするのか、ですよね。まあ、予想だと続編は出ないと思いますが。新しくお話を作成されるのは喜ばしい事です。私ら一同楽しみにしておきます。 (2020年5月1日 19時) (レス) id: 9c2226ad75 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：名梨 | 作成日時：2020年3月8日 18時
