三百八十五話 ページ23
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鎖を引く悲鳴嶼が歯噛みする。
(もう全員が限界だ、これ以上無理だ!)
冨岡や不死川、伊黒の攻撃も威力はあったが、それでも無惨の動きを止める事は出来なかった。
綱引きのような要領で引き合うも、明らかに悲鳴嶼達が引かれている状況だ。
あちらは一人、こちらは十人ほどもいると言うのに。
(死んでくれ、頼む…!)
地面を踏みしめて踏ん張るものの、その地面すら柔らかく抉れるのだ。
一層力を込めて引いた時、上弦の壱の斬撃をも防いだ鎖が千切れた。
(駄目だ!!)
完全に鎖がねじ切られ、無惨を止めるものが何も無くなる。
「―――!?」
そんな時だった。
唐突に無惨の前進が止まった。
太い両脚が膝で斬られ、力無く地面に転がっている。
これには誰もが、あの無惨でさえも微かに身体を揺らすほど驚いた。
(やっと来た!)
そんな中、Aが腰の日輪刀に手を添えて立ち上がる。
これは彼女が少し前に無惨に施した「居待月」がもたらしたものだ。
想像よりも大分遅かったが、この状況ならそれもアリかもしれない。
(アイツはもう再生能力が無い。もうあそこから動けないはずなんだ)
よたよたと千鳥足で無惨の元へ歩みながら、日輪刀を抜いた。
真ん中で折れた萌葱が、じわじわと再び赤くなる。
(……コイツの隣で死ぬのは嫌だなぁ)
焦燥に駆られる気持ちを宥めるように、冗談じみた事を考える。
「アアアアアァァッ!!!」
「…」
叫び続ける無惨を見上げるAの瞳には、燃えるような憎しみは無かった。
こんな姿になってまで生きようとする彼を哀れむような目で一瞥し、分厚い背中に飛び乗る。
『朔の呼吸 結ノ型』
そういや、この型を使うのは初めてだ。
外界の時間の流れに比べて、Aの中の時間の流れは奇妙にゆっくりだった。
コイツだけは、あの短い刀じゃなく、ちゃんとした刀で殺したい。
『祥月』
折れた切っ先が背中に滑り込み、素早く皮膚を斬り裂いた。
震える両脚に最後だから頑張ってくれと言い聞かせ、必死の形相で、少しでも深く斬れるようにと、ギリッと歯を食いしばった。
何も聞こえないはずなのに、身体の奥から聞こえて来るの軋みが一層大きくなった気がした。
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名梨(プロフ) - あばんぎゃるどもふねこさん» 温かい言葉をありがとうございます…!ちなみに私の名前は名無しが元になってるので大丈夫です。ありがとうございます…! (2020年5月8日 9時) (レス) id: ecab760345 (このIDを非表示/違反報告)
あばんぎゃるどもふねこ - 名梨さん» いえいえ、私自身の意見なので。何をどうするかは名梨さんが決めることです。個人的な意見に耳を傾けて下さり有難うございます。ついでに言うと名梨さんの漢字間違えてました!なにやってんだって感じですね。申し訳ありませんでした! (2020年5月5日 10時) (レス) id: 9c2226ad75 (このIDを非表示/違反報告)
名梨(プロフ) - あばんぎゃるどもふねこさん» せめて朔と日は良い感じで終わらせたいので、どうぞ温かい目で見てやってください。 (2020年5月3日 20時) (レス) id: ecab760345 (このIDを非表示/違反報告)
名梨(プロフ) - あばんぎゃるどもふねこさん» コメントありがとうございます。申し訳ありません。私自身としては残しておきたかったんですが、色々あった末に消す事になりました。作品を好いてくださりありがとうございます。そして申し訳ありませんでした。 (2020年5月3日 20時) (レス) id: ecab760345 (このIDを非表示/違反報告)
あばんぎゃるどもふねこ - いやっふうう!!やあっと終わりましたね!無限城編!…で、重要なのはこの後ワニ先生がどういう流れにするのか、ですよね。まあ、予想だと続編は出ないと思いますが。新しくお話を作成されるのは喜ばしい事です。私ら一同楽しみにしておきます。 (2020年5月1日 19時) (レス) id: 9c2226ad75 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:名梨 | 作成日時:2020年3月8日 18時