朔と日 第八幕―番外― 【鬼滅の刃】【竈門炭治郎】

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「…はっ？」



間抜けな声を漏らすAに、不死川は怖いくらい優しい表情を向ける。


いや怖い。



「顔ばっかが俺に似て悪人面だからよォ、どうしても距離を置かれちまう」


「…自覚あったんスね」


「うるせェ黙って聞け」



やっぱりおかしい。


俺の知る不死川実弥はこんな大人しい人じゃなかった。


そもそもこうやって普通に会話できてるのが凄い。凄い怖い。



「だから、礼を言いに来た。アイツはもういねぇから」


「…」



彼の弟である不死川玄弥は、上弦の壱との戦いで十五年の短い生涯を終えた。


人であるのに、まるで鬼みたいに塵となって消えて行ったそうだ。



「…指、大丈夫っスか」


「大した事ねぇよ。冨岡やお前に比べればマシな方だ」



不死川の優しい瞳は、どうもAには居心地が悪かった。


無くなった人差し指と中指の心配をしても、それが揺らぐ事は無かった。


優しいだけならまだしも、どこかに不穏な感情が混ざっている気がするから。



「…これからどうするんスか？」



その感情の正体を知りたくて、Aは話題を変えた。


それに対し不死川は少し考えて、こう答える。



「まず実家に帰んなくちゃなんねェ。玄弥の遺品も家族と同じ所に埋めてやりてェんだ」


「へぇ」


「それが終わったら職探しだなァ。二十五まで貯金は持つだろうがじっとしてんのも性に合わねぇし」


「ほぉ」


「落ち着けるのはそれからだ。まだやる事が山積みに残ってる、急がねェと」


「…なんか」



何だか見ない間に、随分と変わった。



饒舌になってるなと思ってたけど、違う。



この人は



「だいぶ腑抜けましたね」


「…あ？」



ただ寂しいだけなんだ。

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