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全く急ぐ様子もなく、いつも通りのスピードで着替えているつむぐ。
ふと彼の目に、壁に掛けてある、一つの額縁が入った。
「…」
ボタンを閉める手を止め、そちらへ歩み寄る。
そうしてその額縁に向かって、こう一言話しかけるのである。
「幸せか?」
これが彼の日課だった。
酔っ払って隣人の家との仕切りを破壊した翌日も、二日酔いでまともに歩けなかった時も、やかましい同僚が泊まりに来た時も、今日みたいな、何でもない一日も。
「…今日は朔月だってよ」
へらりと笑みを向ける。
額縁に入っているのは、褪せた一枚の写真だった。
そこにはつむぐ本人はいない。けれども、己の世界一大事な家族はいる。その世界一大事な家族と一緒に写っているのは、彼女の世界一大事な人達だ。
ならつむぐからすれば全員世界一大事な人々という事になる。
ここだけの話、先程の竈門炭彦は、特別彼女にとって大事な人のひ孫のようで。
何故か再びこの世に生を受けたつむぐは、今この世で幸せに暮らしている彼らの子孫を見守る義務がある。
遠い昔の記憶を持っている、ただ一人の"人間"として。
「よかったなァ」
不思議と苦ではない。
きっとどこかで彼女は、どこぞの頭カチコチ少年に追い掛け回されながらも、幸せに暮らしているだろうから。
朔と同じように闇夜を照らし、また、太陽に好かれる彼女は、きっと。
「…じゃ、行ってくるわ」
写真の中で、つむぐが見た事の無いほどの花が咲くような笑顔を浮かべる彼女、Aは、きっと。
そんな彼女の隣で同じ様に笑う少年が、彼女を変えてくれたんだろう。
つむぐは少しの嫉妬と幸福感を抱きつつ、喧しい同僚が待つ職場へと向かった。
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名梨です。朔と日、本編終わりました!終わり方がよく分からないので雑かもです。
大正時代軸は変な所で終わらせて誠に申し訳ありませんでした。
この後は私が書きたいだけの話、またはリクエストを受けた話をバンバン書いていこうと思います。
この第八幕で書ける話数限界まででしたら回数無制限でリクエストを受け付けております。
よければその番外編等も読んでいただけたら嬉しいです。そして今まで本当にありがとうございました!!
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RYP!(プロフ) - 懐かしい作品に戻ってきてしまった…!!3年ぶりです、名梨さん。この下にいる暴れまくってる猫の奴はかつての私なのですが、今見ると物凄く恥ずかしいですね。またこの作品を見る日が来るとは思っていませんでした。またどこかで会えたら、嬉しいです。 (12月13日 23時) (レス) id: 4d2d529cd2 (このIDを非表示/違反報告)
ぎゆみかん - 泣いた。ヤバかった。 炭治郎達結ばれた!\(//>∀<//)/ヤッフー すごく楽し(?)かったです! (2020年9月12日 18時) (レス) id: 8ebef6a95a (このIDを非表示/違反報告)
あばんぎゃるどもふねこ - ぎぃやああああああああああ!!!!!!!温泉編きた温泉編きた温泉編きた温泉編きたあああああああああああああ!!!!…コホン、今とても飛び跳ねたい気分ですw (2020年5月19日 18時) (レス) id: 9c2226ad75 (このIDを非表示/違反報告)
ナリア(プロフ) - つむぐさんが出てくるとは思いませんでした!驚きました!炭治郎との2人の話をもうちょっと見たいなぁって思います! (2020年5月18日 20時) (レス) id: 7339556e29 (このIDを非表示/違反報告)
あばんぎゃるどもふねこ - 名梨さん» リクエスト使って頂きありがとうございます!寧塑寺さんの言ってることがなんだかつむぐさんに対する思いみたいで何だかとても嬉しい気持ちになりました!ありがとうございます! (2020年5月18日 17時) (レス) id: 9c2226ad75 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:名梨 | 作成日時:2020年5月11日 10時