四十九話 ページ9
命令された通りに少年達は動いた。
「縄で繋ぐのは腕ですか?」
「そう。注意された事を忘れないで」
各々あの手に渡された縄を、A達の手首と自分の手首とを繋げていく。
Aと自分を繋げたのは、茶髪を肩で切り揃えた一人の少女であった。
彼女の瞳には光が無い。
(数を数えながら、深く呼吸を繰り返す……そうすれば夢の中に入れる…)
少女は目を閉じ、頭の中で数を数え始めた。
十二まで数えた頃だろうか。その頃にはもう、少女の意識は現実世界から消えていた。
・
・
「っ!!」
例の手に教えられた通り、目覚めたそこは夢の中。
寧塑寺Aの、夢の中。
「…ここ…無意識領域じゃないの…?」
人の夢というものは当人を中心に円状に広がっていて、必ずどこかに"壁"がある。
その外側には無意識領域と言う空間が広がっている。
無意識領域には精神の"核"なるものが存在し、それを破壊すれば当人は廃人となる。
この少女に命じられた任務は、その核を破壊し、Aを廃人にする事。
「いつも最初は夢なのに…なんで今回は無意識領域なの?」
実は彼女、これが初めてではない。
過去に何度も他人の夢に侵入しては、その本人を廃人にしてきた。
今自分がいる場所が無意識領域である事に気づいたのも、それ故である。
それにしても
「…気味が悪い、ここ…」
Aの無意識領域は「無」と言うに相応しい場所だった。
温度の感覚も無く、上下左右の感覚も感じられない。
影すら映さない、真っ白な虚無空間。
「…あ、ここ。ここ裂ける」
宙に手を掲げれば何かに触れた。
核すらないこの空間からとりあえずは出るために、少女は錐を振りかぶり、その壁を切り裂いた。
「――!!?」
刹那、今まで体験した事の無いような意識の歪みが少女を襲う。
それに抗う間もなく、彼女は意識を飛ばした。
72人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:名梨 | 作成日時:2020年1月12日 18時