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それと同時に気づいたんだ。
俺は、君を「血も涙もない」と評価しながら、心の片隅で「救わねばならない」という謎の使命感も抱いていた事に。
どうやら君はそういう体質のようだな。赤の他人にも心配される体質。
俺もその赤の他人の一人だったという事だ。
『俺、これでも柱なんで』
あぁ、そういう事か。
妙な納得感が込み上げると共に、なんだか無性に悲しくなった。
君は柱という階級すらも背負っていたのか?
あんな冷酷な目にさせるほどの過去を背負うだけでも大きな負担になるだろうに。
それでも君は背負う事を選んだのか?
凄惨な過去も、重圧の階級も。
『いいんス、あなたに比べれば別に、大した怪我じゃないっスから』
俺はもう君を救う事ができない。
どれだけ切望しようと絶対にそれは叶わない。
しかし、哀しくはないんだ。
彼女にはもう支えてくれる相手がいるからな。
『…俺は竈門炭治郎!!』
『知っとるわ!!』
そう、君だ。竈門少年。
君には彼女を救う力がある。
現に俺はあんなに大声を上げる彼女を見たことが無い。それがその証だ。
だから、君にはもう一つだけ頼みたいことがあるんだ。
もし聞こえていたならよろしく頼む。
どうか、どうか彼女を助けてやってくれ。
罪の泥沼に溺れかけている彼女を、君が引っ張り出してやるんだ。
俺は信じているよ。
君がきっと、その後彼女を連れて俺の墓に来てくれると。
最後になるが、ここで一つだけ言わせてくれ。
寧塑寺少女。
これは俺の勝手な願望だ。
竈門少年と共に来てくれた時には、そこで君の涙を見せてほしい。
悲哀の涙ではない、温かい涙を。
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作者名:名梨 | 作成日時:2020年1月12日 18時