五十二話 〈参ノ記憶〉 ページ12
「っ…、くッ…」
(なんなの、あの人達)
意識がはっきりした時には、彼女は荒んだ地面に膝をついていた。
結果的に言えば、Aは暴行を受けた。
今にも壊れそうなボロボロの家屋が何軒も建つ小さな街のような所で、彼女は大の大人数人に寄ってたかって殴られ続けた。
何したのこの人。
感覚的に察するに、Aはまだ十にも満たない子供だと言うのに。
衣服もボロ雑巾のような布切れを身に纏っているだけであった。
痛みのあまり地面にうずくまるA。
そんな彼女の頭上から、
「えっ、ええぇ!?大丈夫かお前!!怪我すンげぇな!!」
なんだか騒がしい声が降ってきた。
Aが何とか顔を上げる。
陽光が逆光して顔はよく見えない。ただ、鈍く輝く銀髪が印象的だった。
「…お、れに……近寄るんじゃ、ねぇ…!!」
「おいやばくね!?左足折れてるンじゃね!?」
コイツは話を聞かない奴のようだ。
当たり前のようにAに近付き、「よっ」と言って彼女を背負った。
そしてスタスタと歩き出す。
「い゛ッ…!?」
「あっ、ごめンな!!痛かったか!!」
(…変な人)
「……痛くねぇし…」
「…ほぅ。まだ強がる元気は残ってンだなお前。生意気な奴だ」
目の前で銀髪がふわふわと揺れている。
それに伴ってAの身体も揺れる。
母親が子供をあやす時の揺れにそれは似ていて、Aが眠った事で少女の意識も途切れた。
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作者名:名梨 | 作成日時:2020年1月12日 18時