208 今市隆二side ページ9
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「隆二、アコちゃんが2人で話したいって」
会議室で臣と待っていると、突然ドアが開いたので反射的に立ち上がった。開けたのは直己さんだった。
アコは隣の会議室にいた。ノックしてから入る。
怒ってるか不安だったけど意外と普通の表情で安心する。
向かい側の席について俺から話を切り出した。
「話、聞いた?」
『聞いた』
「やっぱり、無理?」
『いいよ』
すんなり俺の望んでた答えが返ってきた。
耳を疑う。
「え、まじ?」
『どーせ今市さんの事だからちゃんとトライはしたんでしょ?』
「う、うん」
『あたしがやれば今市さんはちゃんと出来るの?』
「うん」
花火のPVで、本当は女優さんと絡むシーンがボーカルの俺と臣にだけあった。
俺は本当に何も出来なかった。
仕草が出来れば表情が硬くなり歌詞と口が合わなくなる。
緊張すればするほどさらに焦って空回りしてしまって、蜷川さんには迷惑をかけた。
そしてPowderSnowでまた蜷川さんにお願いできることが決まって。
「今度こそ、女性目線できゅんとするPVを撮りたいの。スタッフでも、もうこの際知り合いでもいいから、今市くんが緊張しない女性は誰かいる?」
監督の言葉に、すぐにアコが思い浮かんだ。
アコなら異性として見たことはない、妹みたいな存在だからきっと大丈夫だと思った。
「高校生の子なんですけど」
それで俺が勝手に名前をあげた。
それを説明し終えると、
『隆二くんいつもすごい頑張るじゃん?そういう所あたし尊敬してるんだよね。だからなんていうか…今回はあたしが助けられるなら力になります』
顔も映らないみたいだし…とアコは付け加えた。
「…まじか。良かった…ありがとう」
『てか返事明日までってもう、あたしやるしかなくない?』
「ばれた?」
『ばれるわ』
俺はようやく一安心して、大きく息を吐いた。
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作者名:コウ | 作成日時:2018年10月2日 22時