家出少女５ (ページ32)

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その日の夜は敬浩を抱きしめて眠った。

敬浩は静かに泣いていた。

どうして泣いてるのかは話さなかったから、なんと声をかけたらいいのか分からなかった。

一晩中、頭の中はパニックだった。

とにかく敬浩が壊れてしまいそうで無我夢中で抱きしめるしかなかった。

「弥生ちゃーん、起きてる？」

「…………起きてる」

「ごめんね、迷惑かけて」

恥ずかしいのか、顔を見せないまま敬浩はあたしに謝った。

「篤志さんのファンの方にアツシの邪魔すんなって言われちゃった。ボーカルなんか辞めちまえって。………EXILEのボーカルは、アツシとシュンだけだって」

「そんなこと…」

その時に初めてこの人が本当は弱い人だと知った。
いつもの笑顔やふざけた口調はそういう自分を隠す為のものだったんだと気付いた。

「敬浩は、篤志さんや…HIROさんやスタッフの皆さんに認められて、EXILEになったんでしょ？敬浩の歌で元気になる人だってこの世にはたくさんいる」

「………」

「もし辞めるとか考えてるなら、敬浩の歌で元気になってる人たちを裏切るの？」

「でも」

「全員に好かれるために歌うんじゃなくって、自分を信じてくれる人のために精一杯歌えばいいと思う」

次の日、立ち直った敬浩と部屋を出ようとして私に言った。

「もしまた俺が弱ったら、また慰めてね」

あまりにも弱々しく不安げに聞いてくるものだから、

「わかった」

そう答えていた。

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