226 高野弥生side ページ27
.
私が広臣を振った理由は歌のことだけ考えて欲しかったから。
二代目vs三代目のライブでスタッフとして初めて会場に入った。
けど、初めての現場で張り切り過ぎたからか最終日の公演中に貧血で倒れてしまった。
それを知った広臣は公演を終えて真っ先に病院に駆けつけてくれた。
普通の彼女なら喜ぶところなのだろうけど、私は彼女よりスタッフとしてその行動にすごく幻滅した。
ライブ後は関係者の方に挨拶をしたり、何よりメンバーとスタッフさんと反省会をしなければならない。
なのに、それを全部放って広臣は病院に来た。
後から聞いたら直人さんが行ってやれって言ってくれたらしいけど、
でも、もし私が倒れたのが公演前だったら?
初日だったら?
それでも広臣は駆けつけてくれたと思う。
それは駄目だ。広臣はプロのアーティスト。
ファンの方々を1番に考えなきゃいけない。
仕事のことを1番に考えて欲しい。
私のことなんかで仕事を放り出さないで欲しかった。
私のことで仕事を放り出してしまうなら、私がいなくなろうと思った。
広臣のこれからの無限の道を、私なんかが壊したくなかった。邪魔したくなかった。
「貧血とか…すげえ心配した。ちゃんと食えって言ったじゃん俺」
だから、病室で私を見てホッとしてる広臣に、
「ごめん、別れて」
理由は、他に好きな人が出来たと言った。
多分本当のことを言っても広臣は納得しないと思ったから。
でたらめな言い訳をつらつらと並べて、広臣を病室から追い出した。
広臣はライブのTシャツのままで、額には汗が滲んでいた。
目は合わせられなかった。
その後、何回も電話やメールが来たけれどしばらくすると来なくなった。
もちろん社内ですれ違うこともあって、その時は逃げるように去った。やっぱり辛かった。
.
221人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「芸能人」関連の作品
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:コウ | 作成日時:2018年10月2日 22時