月の雫２

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安藤アコside






そこでようやく千絵があたしから腕を離した。






「あーーあ。やられたわ〜〜。アコがAちゃんと仲良くなったのは知ってたけど、まさか臣ちゃんとも知り合いだったとは」


「すいません千絵さん」


「気にしないで！臣ちゃんは知らなかったんだし！というか敬浩くんが仕組んだんじゃないよね？」


「まさかぁ。むしろ俺は止めようとしたよ。ねー弥生」


「止めようとはしてなかった。……でも千絵、追いかけなくて良かったの？ちゃんと話したいって言ってたじゃない」




外から涼介さんが入ってきた。手には大きなお皿にサラダが盛り付けてある。涼介さんも気付いてたのに逃げたな。ていうかこのタイミングで料理持ってくるか普通？！

軽く睨みつけると、ジェスチャーでごめん、と謝られた。エアーで謝るな！





「でもこんな急に会うとね、心の準備というか…あの子、あたしの顔が嫌いみたいだし…」


「千絵の顔が？」


「うん。嫌いなんだって。昔言われたの」




千絵の顔が嫌いって、そんな人いるのか…




「だから千絵は顔を隠すようになったの？」


「ん〜違うけど、こういう風にするきっかけにはなったかな」





千絵は普段鳥の巣みたいな鬱陶しい髪型な上に、分厚くて丸いダッサいメガネをしている。顔の上半分はほとんど見えない。


けれどメガネを取って整えると一変する。
素顔はモデルとか女優とかにも引けを取らないレベルの美人だ。


あたしはずっと、その美貌のせいで男から絡まれるのが面倒だから隠してるんだと思ってたけどまさか藤原さんの言葉がきっかけだったとは…




藤原さんは何を思って千絵の顔が嫌いだと言ったんだろう






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