月の雫２ (ページ7)

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高野弥生side

「Aさん、誰が連れてきたの？」

あたしの言葉に、
涼介が大きく息を吐く。

「俺は知らなかった」

「臣だよ。臣は事情知らないからしょうがない」

そう言って敬浩は笑う。

そっか…広臣がまさか彼女を連れてくるとは。

というか広臣とAさんが知り合いだったことすら知らなかった。

「30分前に病院出たってラインきてる。もうすぐ帰ってくるな」

涼介がスマホを見ながら言う。

確かに病院はそれほど遠くない場所にある。

時間がない。

「Aちゃんは何も知らないのよね」

「知らないでしょ。変わった様子ないし」

「そもそもあの子は会いたくないって思ってんの？」

「知らないけど、でも、4月に送ったメールは既読無視されたって言ってたわよね」

「あーーそうだった…」

「でも千絵はいつかは会いたいって言ってたじゃん。なら今なんじゃないの？会わせちゃえばいいじゃん」

「またそんなこと言って…」

敬浩のこういうところほんと嫌い。

強く睨みつけると、軽く笑われた。

扉の開く音がする。来た。

涼介がタバコに火をつけながらキッチンへ消えた。

あいつ。逃げやがった。

「ただいま～～！どうしたのこんなとこに2人で！てかアコ着いてる？！着いてるよね？！」

「うん。奥にいるよ」

「やったぁ敬浩くん、奏多見ててくれる？」

「いーよーー」

奏多を敬浩の腕に移動させ、奥の個室に向かって走り出す千絵を思わず追いかけた。

「ちょっとまって、千絵！」

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