月の雫

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安藤アコside





来週の藤原さんとの鑑賞会、楽しみだなあ。

人と一緒にテレビとかアニメとか見ながら、あーだこーだ喋るの好きなんだよね。


敬浩さんの家にいた頃とか思い出す。
千絵と2人で深夜アニメリアタイしてたなーー




そんな昔のことを思い出しながら、1人でバラエティー番組を見ていた。

一人暮らしを始めてからどうも料理が面倒になってしまって、いつもスーパーのお惣菜やコンビニ弁当にお世話になってる。

料理ってさ、食べてくれる人がいるから頑張れるんだよね。って思うのはあたしだけ？



あーーなんか、つまんないなあ。
全然面白くない。




録画してた番組見るか。

ご飯を口に運びながら手でリモコンを探すけど、思ったところにない。辺りを見渡すとテーブルの上にあったので、立ち上がる。




すると玄関から鍵の開く音がした。

リモコンを手に取って、テレビを消した。









「連絡きてないんだけど」


「だって連絡してないし」


「言ってくれたらあたしがそっち行くってば」


「とか言ってぜんぜん来てくれないじゃん」


「忙しいと思って」


「忙しくてなかなか会えないから来たんだよ。明日からまたリハで秋田だし」





ニット帽、サングラス、ジャケット、靴下…喋りながらも次々と脱いでソファに投げ捨てる。いつものことだ。






「俺の着替えどこにあるっけ？」


「知らん」


「シャワー浴びてもいい？風呂沸いてる？」





返事なんて聞くつもりもないんだろう。勝手に部屋に入っていく後ろ姿を見つめる。


あたしは最近のこいつの後ろ姿が嫌いだ。

その背中を追いかけてそのまま抱きついた。




分かってる。

会わないと不安になるのはあたしの方だ。







「お母さんと喧嘩したんだって？大丈夫？」


「大丈夫じゃない」





やっぱりそうか。

誰から聞いたんだろう。聞いたら無理してでも来るだろうから、言わなかったのに。

振り返ってきて、目が合って、優しく抱き締められる。
滲んでくる涙をシャツで拭いてやった。








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