影の少女はホグワーツの広報員です。 (ページ2)

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男が出て行ったあと、私は状況を整理する。

私は下校途中に、あの男にスタンガンで動きを止められ、車の中で絞め落とされ、この少女に入れられた。この部屋は多分男の部屋。私の荷物は部屋の隅に置かれていて、天井には監視カメラがある。私に猿轡を噛ませたりしていないことから察して、叫んでも外には聞こえない。そして、おそらく相手は私を解放する気はない。

(なんでこんなことに……。)

私は溜息をついた。

この少女という拷問器具は、ルイ11世の時代に作られ、ヴェルダンの司教を10年間も閉じ込めて発狂させたものだ。直接相手に力を加えない拷問器具だが、関節が固まって、筋肉が萎縮し、余りの苦痛から発狂する。

私は、男が指摘した通り、一人暮らしだ。幼い時に両親が離婚し(原因は母の浮気)、6歳だった私を父が、2歳だった妹を母が引き取った。いわゆる父子家庭だ。
父は出版関係の業種で、私が高校生になったのを機に転勤した。父は結婚した際に一軒家を建てていたので、私は付いて行かずにその家に一人で住んでいる。いわゆる、単身赴任というやつだ。今年の夏は南北アメリカに取材に行くので帰ってこない。

父からの仕送りが十分もらえるので受験生の今はバイトもしていないし、持ち家に住んでいるのだから家賃もない。水道光熱費の徴収は口座引き落としだ。

要するに、誰も私がいなくなっても気がつかないという男の指摘は当たっている。

学校が始まるまで、誰も私がいないことには気がつかないし、その時まで私が正気で生きている保証はないのだ。

1日が経った。男は帰ってこなかった。

2日目、男は帰ってきた。特に私に水も食料も与えず、ただただ眺めていた。

3日目、2日目と同じく。この辺りから意識が朦朧とし始める。脱水症状とストレス、関節の痛みによるものだろう。

4日目、男は外出した。意識が混濁する時間が長くなってきた。

ここから先はもう時間の感覚がない。

手足の感覚はとっくの昔になくなり、暑くても汗さえもかかない。おそらく体内の水分がほとんどないのだろう。ただでさえ下校途中で喉が若干乾いていた時に連れ去られた。このまま熱が体に篭り続けると危ういが、どうしようもない。意識もはっきりせず、今のようにきちんとした思考ができる時間も短くなってきている。

(発狂するよりも、脱水症状と、それによる衰弱死の方が早いんじゃないかな……。)
そんなことを思っているうちに、再び私の意識はログアウトした。