君とカフェモカ ２

Cherry　（１ ページ30

*

　その後3時間ほど館内を見て回り外へ出ると、辺りはすっかり夕焼け色に染まっていた。

　秋の日は、つるべ落としとはよく言ったものだ。

　さっきまでの夕焼け色は瞬く間に暗闇へと姿を変え、吹く風は冷たさを増していた。

　仕事を終えた人々が、さっき見た魚の群れのように次々に駅の方へと飲み込まれていく。


「A、今、駅に行くとラッシュに巻き込まれる…せっかくだからその辺、見て回るか？」

「うん！ウィンドウショッピングだ！」

　ドキドキする気持ちを押さえながら、指と指を絡ませ手を繋ぐ。

　恋愛初心者のようなオレ達でも今、誰が見てもちゃんと恋人同士に見えるだろ？

　すぐオレの横を歩くAの顔を見れば、すぐに気付いて微笑み返すA。

　ただそれだけで幸せな気分になれる。

　なんて単純なオレ―――


「わぁ！コレ、カワイイな！」

　Aがアクセサリーショップの前で立ち止まった。

　じっと見つめるAの視線の先には、サクランボをモチーフにしたピンクのピアス。

「なに？コレ欲しいの？」

「―――ううん…コレ、あたしにはカワイ過ぎてきっと似合わないから…」

　少し寂しそうな顔でAが呟いた。

「そんなこと無いと思うんだけどなぁ…」

　そう言えばAはいつもスカルやクロスがデザインされたシンプルなヤツしか着けてなかったような気がする。

　どんだけAは自分に自信が無いんだろう…

「ありがと…航平がそう言ってくれるだけで十分だよ。」

　Aは肩をすくめ苦笑いしたあと、また歩き始めた。


*

Cherry　（２→←Aquarium　（６

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す