君とカフェモカ

えぴそーど　２１ ページ21

*
　来ない―――

　あの日から５日経つのにアノ人は来ない。

　あの日あたしに言った言葉は嘘だったの？

　心にもない事、言ったから、ここに来れないの？

　時間が経つにつれ、あの暖かさと言葉は幻だったような気がして怖い。

　次、この店に来た時、何もなかったように振る舞われたらどうしよう…

　生まれて20年間、まともに恋をしてこなかったあたしが、こんな時どうし

ていいのか分からない。

　高校時代ユウキに片思いしか、してこなかったあたしが、今アノ人に思われ

ているという事実―――

　それさえも疑ってしまいそうな不安な心。

　真っ暗な闇の中、手探りでアノ人の手を探している。

　押し潰されそうな胸の奥、不安と希望が戦っている。

　ねぇ、どこにいるの？

　早くあたしの手をつかまえて！

　この真っ暗な闇の中から連れ出して！


　カランコロン…

　ドアベルの鳴る音に振り向き、思わず泣きそうになった。


「ただいま！！」

アノ人が、ちょっとテレ臭そうに笑いながら立っていた。

*

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