君とカフェモカ

えぴそーど　１３ ページ13

*
　雨の中、捨てられた子猫のようにずぶ濡れのところをこの店のマスターに

拾われた。

　あたしは生まれ変わる―――

　ありのままの自分を、飾らない自分を変わることなく生きて行きたい。

　男なんて要らない。

　好きな男なんて要らない。

　もう、恋はしない。


「A、スカートはかないの？」

「は？スカートなんて持ってないし…」

「A、もうちょっと洒落っ気出してメイクとかしてみなよ！」

「なに？メイク？それって美味しいの？」

　あたしが、あたしらしく生きて行くのにそんなものは要らない。

　外側だけ飾り立ててみても中身が伴わなければ所詮偽物。

　ニセモノのあたしは要らない。

　これからもずっと―――


　ウザい！！髪、伸びた！

　今日は金曜日―――

　いつものサロンは午後９時まで開いてる日…

　帰りに寄ってみるか…

　ゴミをまとめるのに腰をかがめた時、頬に髪の毛がかかってウザい。

　いつものバッサリショートカットにしてもらおう！

　そんなことを考えながら裏口からゴミを出しに行った。


「いった〜ぃ！！なんだよ、アンタ！！」

「ごめんなさい。ちょっと追いかけられてたものですから…」

「なに？どうしたの？アンタ何かやらかして逃げてんの！？」

　薄暗い路地の街灯の下、突然、迷い込んで来たのはアノ内村航平。

　助けを求めてる、この手を振り払うわけにはいかない。

　しょうがないなぁ…髪の毛は、また来週にするか―――

　それよか、お腹空いたな…

　この人ペペロンチーノ好きかなぁ？

　ひとりで食べるご飯は味気なくてキライ…

　今夜はひとりで食べなくて済みそうだ。

*

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