sexy top cat

14 臣 ページ14

「あのね

誰でもよかったんだ」



「何が」



「あの人じゃなくても、優しくしてくれる人なら誰でもよかった」





百万ドルの夜景を見たまま言うA
なんだよそれ





「最初は優しかったし

いつも「好き」とか「愛してる」とか「綺麗だ」とか「かわいい」って言ってくれてたから」



「そっか…」





それってやってる最中に言われてたんだろ
そんなん思ってなくたって言うよ





「わかってるよ
そんなの本心じゃないって

でもそれでよかった
そう思われてるって勘違いしてたかった」





話してるAの横顔を見ながら聞いてれば
顔色も口調も変えず淡々と言ってる
どうしたらそうなんだよ





ずっと窓の外を見てたAは
横を向いて俺と目が合うと





「あのね

私ね、お父さんとお母さん死んじゃったの」



「は？」





言いながら笑って見せた
なぜそんな事笑いながら言うの





「いつ？」



「あの日…

臣の部屋から飛び出して帰った日の次の日」



「嘘だろ」



「嘘じゃないよ
あたし天涯孤独なの」





また笑ってる
Aのお母さんは俺も一度会った事がある
ちょいちょいAの部屋に来てたみたいで、たまたま俺が行った時に来てて飯作ってくれて食わしてもらったから





「なんで笑ってんだよ」



「笑ってなきゃやってらんないから」





もしかして泣けないとか？
こいつ…泣かないでずっと笑ってたのか？





一人っ子で兄弟もいないし
頼る人も甘える人もいないで我慢してたのか？





「なんで俺に言ってこなかったんだよ
俺、次の日電話したよな？」



「だって…


………………ピアス…」





やっぱあのピアスか
だから電話も出なかったのか





「それとこれとは違うだろ」



「私だって連絡したかったよ
臣にそばにいてほしかったよ


でも…」





言いながらAの目から涙がこぼれ落ちた





思わず抱きしめると
声をころして泣いてる





「そんな我慢しなくていいから

思いっきり泣けって」





言ってやれば声をあげて泣きだしたA





Aが俺の前で泣くのは今まで一回しかない
でもこんな泣き方はしなかった





多分、会わなかったこの何年間泣きもしないで
一人で頑張ってたんだろう





だから優しくしてくれる誰でもよかったって事か





そう思うと
あの時何としても追いかければよかった





ごめんな
そばにいてやれなくて





嗚咽をあげて泣いてるAを強く抱きしめ続けた

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