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「──すみません」
嫌だ。力強くそう思った時、私を守るようにして誰かが立った。ぶかぶかのパーカーは、もしかして、
「……聡くん?」
「お待たせ、Aちゃん。……すみません、僕の友達です。嫌がってるので離してもらえませんか」
ふわりとした笑顔で私を見た聡くんは、次の瞬間にはハッキリとした口調で男の人にそう言った。
男の人は私の手首を離すと、不機嫌そうな表情で人混みに紛れて行く。
「びっくりしたぁ……」
「Aちゃん大丈夫? 何もされてない?」
「うん、大丈夫……」
ぽつりと呟くと、眉を八の字に下げた、とても心配そうな表情の聡くんが私の手を優しく包んだ。いつもの聡くんだ。さっき男の人と対峙していた聡くんじゃない、優しくてちょっとドジな。
「なんでここに?」
「あの後勝利に呼び出されて、映画観に行こうとしてたんだけど、そしたらAちゃん見つけて」
「俺ちょー焦ったんだけど!」と、聡くんが息を吐く。駆けつけてくれたんだ。俯く聡くんの姿に、なんだか胸がほんわりと暖かくなる。
「Aちゃんは友達は?」
「遅れるって。それでウロウロしてたら捕まったの」
「そっかあ」
困ったように聡くんが笑った。その後、「大丈夫?」とやって来た勝利くんと一緒に友達を待ち、4人で映画を観ることになった。
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晩ご飯も一緒に食べた私たちは、そのまま2人で夜の帰り道を辿る。
「聡くん、朝はありがとうね」
街頭に照らされる道を歩きながら、ぽつりと呟く。聡くんは、一瞬キョトンとした表情になってから、「全然いいよ! 俺も必死だったし!」と笑った。
「聡くん、私今日の事で分かったの」
「……へ? 何を?」
「強引が許されるのはイケメンだけってこと」
漫画やドラマで思わず着いて行ってしまうのはイケメンだからだ。だって今日、ぐいぐい引っ張られても全然キュンとしなかったもん。
そう思わない!? と隣を見ると、聡くんは残念そうな、呆れた表情を浮かべていた。
……え、何その顔。
「そか……良かったね」
何も良くなさそうな表情で聡くんは頷くと、静かに帰り道を歩き出す。なんで?
本当は、今日分かった事はもうひとつあって。
聡くんは実は男らしくて頼りになるんだって実感したんだけど……まだ内緒にしておこう。
▷▶1回戦:君の勝ち。 Next……?
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