君と僕の攻防戦【So.M】 (ページ32)

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困惑しているうちに、風磨先輩はグミと板チョコを持ってレジへ向かっていく。一緒に歩き出した健人先輩につられて、私もまだお菓子を選んでいないのにその場を離れた。

『知ってる？渡すお菓子にも意味があるんだよ』

『あー、なんか聞いたことはあります。どのチョコがどれかまでは知らないんですけど』

『マカロンは『あなたは特別な存在』、カップケーキは『あなたは特別な人』。どっちもピッタリだけど、作りやすいのはカップケーキかな』

『そうなんですね……』

『いーじゃんカップケーキ。混ぜて焼くだけだし。ホットケーキミックス混ぜときゃなんとかなる』

『え、それ手作りにする必要あります？』

　お会計を済ませた風磨先輩がにやにや笑いながら会話に入ってきた。ホットケーキミックスで作れるのは有難いけれど、そんなに適当で良いのだろうか。

『まぁ無理に手作りにしろとは言わないけどさ。凝ったのじゃなくても、上手く作れなくてもいいから頑張ってみるのもアリなんじゃない？』

　そんな言葉と共にほら、と差し出されたのは、バレンタイン仕様でハートが散りばめられた板チョコ。そろりと受け取ると、先輩２人は満足そうに笑った。

『とりあえず13日は聡ちゃん預かるから。頑張って！』

『試験も頑張れよー』

　ひらりと手を振って去っていく先輩達。結局、自分で作るなんてまだ言っていないのにそういうことにされてしまった。とはいえ、板チョコを受け取った時点で作ると返事をしたようなものだけれど。

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　そして、先輩達は約束通り、13日の今日は朝から聡くんを連れ出してくれた。なんでも、マリウスくんの家でパーティーするらしい。楽しそうで何よりである。

　午前中に聡くんを見送った私は、慌ててスーパーに材料を買いに行った。バレンタイン前日ということもあり、板チョコが並んだ棚はスカスカで、失敗した時用に、と余分に買うことは出来なかった。

　洗濯物を干し、掃除機を掛けたりと家事を一通り済ませたのち、キッチンに買ってきた材料たちを並べる。あらかじめプリントアウトしておいたカップケーキのレシピも準備して、早速作ろう、とボウルに手を伸ばした時、カウンターに置いていたスマホが振動して着信を告げた。

　この着信に出てしまったことにより、私の今日１日のスケジュールがことごとく崩れていく羽目になる。