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『お、Aじゃん!』
『A久しぶりだなー』
コンビニのお菓子コーナーで、期末試験の勉強のお供につまむチョコレートを選んでいると、後ろからポンと肩を叩かれた。
振り向くと、そこに居たのは健人先輩と風磨先輩の2人。うわ、ちょっとめんどくさい人達に捕まった、と思うとそれが顔に出ていたのか先輩達はにやりと意地悪そうな笑みを浮かべた。
『試験どう? 聡ちゃん元気?』
『聡くん毎日頑張ってますよ。日に日に隈が酷くなってて心配ですけど』
『根を詰めるタイプだからなぁ、松島』
風磨先輩が、眉を寄せてそう呟く。聡くんは勉強が苦手なのもあるけど、心配性な部分も影響して試験前は詰め込んでいる。
『Aは試験大丈夫そう?』
『落とさないようには、なんとか』
『無理し過ぎずに頑張れよ』
へらりと笑った先輩達は棚からグミの袋をひとつ取った。そのまま通り過ぎるのかと思いきや『そういえばさぁ』とまた会話が始まる。
『もうすぐバレンタインだね』
『松島に何あげんの? 手作り?』
季節に合わせてハート柄のイラストが描かれている板チョコを手に取った風磨先輩がそう話す。あー、バレンタイン。もうすぐだなぁと頭の片隅にはあったけれど、今は試験でそれどころじゃなかった。
『そうですね……試験が終わったら買いに行こうかなと思ってます』
聡くんってどんなチョコが好きなんですかね? と続けると、先輩2人が『えっ!?』と勢いよくこちらを見た。
『買うの!?』
『手作りじゃないの!?』
ぐいぐいと迫られて思わず後ずさる。なんでそんなに手作りを押すんですか?
『いや、私料理下手で……中学の時も高校の時もお母さんに手伝ってもらってて』
それに、同じ家にいるから何作ってるかなんてすぐに分かるし。本人の目の前でチョコを作るのは私にはハードルが高い。
そんなことをもぞもぞと話すと、『分かった!』と健人先輩が大きく頷いた。
『2月13日の聡ちゃんは俺らが預かる!』
『……はぁ?』
『14日まで聡ちゃんは俺たちが足止めするから、その間にAはチョコ作れ!』
『おー、いいなそれ。1日あったら作れるだろ』
『いや、は?』
当事者の私を置いてけぼりにして2人は話を進めていく。これはどういうこと? 手作りチョコ決定なの?
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