・ side So ページ22
その会話以降も、俺の言い間違いは度々起こり、その度にAちゃんはお腹を抱えて楽しそうに笑った。そのお陰か、夕食の時間になる頃にはだいぶ打ち解ける事が出来た、と思う。
「おまたせ、オムライスだよ」
目の前にオムライスの乗ったお皿を置くと、Aちゃんは驚いた顔になった。「うわぁ、」と小さく呟くと、目をキラキラさせて俺を見上げる。
「松島くん、凄いね！ お店のオムライスみたい」
「それは言い過ぎ！」
どうぞ召し上がれ、と向かいに座ると、Aちゃんはそっと手を合わせて丁寧に「いただきます」と言った。スプーンで掬われた１口目が口に運ばれていく様子をドキドキしながら見守っていると、Aちゃんがまた目をくるりと丸くした。
「美味しい！」
花が咲いたような笑顔、とはこの表情を表すんだ、と思った。
俺をまっすぐに見つめて、ふわりと笑う彼女に、釘付けにされて。
「松島くん、お店開けるんじゃない？」なんて冗談を言いながらスプーンを運ぶAちゃんをぼんやりと見つめていた。
「……松島くん、食べないの？」
「へっ？ あ、食べる」
「本当に料理上手なんだね……私、洗濯とかは頑張るから」
ご飯は松島くんの担当だね、と微笑む彼女に、俺はなんでか上手く返事が出来なくて。
じんわりと熱くなる身体。なんだか波乱の幕開けな同居生活。
「……聡でいいよ！」
俺も下の名前で呼ぶし。そう笑いかけると、Aちゃんは少し戸惑ったように頷いた。
大学生活は４年間。この同居生活も４年間。だけど、その先も君にご飯を作ってあげたい。守ってあげたい。ずっと笑っていて欲しい。あの日抱いた気持ちは、だんだんと大きくなっていく。
その想いは、なかなか君に伝わらないのだけど。
これは、もどかしい君と俺の攻防戦の、はじまりのお話。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 101人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ジャニーズ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
