・ side So ページ21
「初めまして、松島聡です!」
2人暮らしだから、と用意されたのは2LDKのマンション。セキュリティも充実している代わりに、駅から少し遠いし部屋もそんなに広いわけじゃないけど、家賃を考えると妥当かな、と思う。
ダンボールだらけのリビングで会ったのは、ジーンズに薄手のセーターを着た女の子だった。不安なのか写真以上に固い表情を浮かべているけれど、こちらを警戒している様子がありありと伝わってくる彼女は、案外分かりやすいのかもしれない。
自己紹介を済ませて、荷物の整理に取り掛かる。
先にリビングとキッチンの整理から始めることになって、俺はコード類の配線や戸棚の建付けを、Aちゃんは小物類や食器を片付けだした。
無言の空間。音楽とかかけたいけど、Aちゃんの好きな曲なんて知らないし。
女の子と仲良くなるのは得意な方だけど、なかなか視線が合わないあの子と打ち解けるには少し時間が掛かるかもしれない。
そんなことを考えながら、嵌め込んだネジをまわそうと工具箱を回そうとして、……あ、あっちに置きっぱなしにしてたんだ。
振り向くと、ダンボールから壁掛け時計を取り出すAちゃんの足元に工具箱が置いてあるのを見つけた。
「ねぇ!」
呼びかけると、やっぱり固い表情で振り向くAちゃん。首を傾げる彼女の足元の工具箱を指しながら「そこの六角ドライバー取って!」と言うと、Aちゃんは目をくるりとまん丸にした。
「……六角ドライバー?」
「えっ違う? えっと、メガキントンだっけ?」
「……」
「待って待って! メゲル! メゲルでしょ!」
絶対コレ! メゲル! と叫ぶと、Aちゃんが堪えきれないというように目をくしゃりとさせた。お腹を抱えてあははっ! と笑い出す。
「えーっ? 違う!? 違うの!?」
「ちがっ……あっはは!」
ケラケラと楽しそうに笑うAちゃんと、メゲルの正式名称が分からず恥ずかしい俺。……めちゃくちゃ恥ずかしいけど、目の前の彼女が楽しそうだからまぁ結果オーライかな、なんて。
・ side So→←番外編:僕が恋に落ちたとき side So
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