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５限の授業が終わり、放課後になる。
未だ謝る決心のつかない私は、逃げようと友達をカラオケに誘うものの「さっさと謝りなさい」と断られてしまい。いつも通り聡くんが迎えにくるのを待っていた。
遅いな。いつもなら、講義が終わって５分後くらいには来てくれるのに。
10分経っても聡くんは来ない。用事が出来たのか、喧嘩しているからか。LINEには何もメッセージが届いてなくて、……怒ってるからか、と一人納得する。
「……たまにはAから迎えに行ってあげたら？」
待ってるんじゃない？ と友達が言う。待ってるのか、なぁ。でも、連絡してまで迎えに来たがるんなら、今日だって迎えに来てくれたらいいんじゃないのなんて自分勝手な考えが浮かんだ。
自分が悪かったってちゃんと自覚したのに、意地を張って謝るのが難しい。つくづく、可愛くないなと思う。
ほら行くよ、とお節介な友達に背中を押されながら聡くんのいる学部の棟へ向かう。教室の移動や門へとバラバラに歩く学生たちの中、見覚えのある背中を見つけた。
「あ、聡くん……」
聡くんと、……誰？
黒いワンピースを着た女の子が、隣に立って歩いている。
女の子に向かってにっこり微笑む聡くんの横顔が目に入って、胸の奥がズン、と重くなった気がした。
何あれ。
「……帰る」
「え？ でも、」
「聡くんなんて、しらない」
戸惑った表情の友達を置いて、早足で大学を出る。
聡くんに無性にイラついて、心の中が黒い絵の具をぶちまけたみたいに真っ暗になった。
何に怒ってるの、と訊かれたらうまく答えられないけど、さっきの光景がチラつく度にイライラが増す。
最寄り駅で降りて、家に向かわず近くの公園に入る。今聡くんと鉢合わせたら、もっと喧嘩してしまう。
・
女の子に笑いかける聡くんに腹がたったし、そんな感情を抱いた自分にも余計に腹がたった。
１年一緒に住んで、毎日ご飯を作ってもらって、迎えに来てもらって、なんでもない話をたくさんして。いつの間にか、私は聡くんの中で友達よりも近い女の子なんだと無意識に思っていた。
この先も、聡くんがいる、緩やかで心地良い生活がずっと続くと思い込んでいた。
けど、違う。
聡くんに彼女が出来たら、この同居生活はおしまい。
その事実にあの時やっと気付いて、それが嫌で怖くて仕方なくなった。いつの間にか、聡くんは私の中で大切な人になっていたみたいだ。
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