弱い私を愛してくれた【∞紫】【完結】 (ページ8)

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いらっしゃいませページ8

村「A」
A「…村上さん」
村「あ、それあかん、あかんぞ」
A「へ？」
村「俺のもんになってくれたんやろ、もう村上さん呼びはあかん！」

顔をあげるとくしゃくしゃの笑顔で彼は私を見つめていた。

A「し、信五さん」
村「もう一声や！」
A「う、うーん」
村「信ちゃんは？」
A「え、えっと…し、…し…」
村「さっと言わんかい！」
A「し、…信ちゃん」
村「ん！」

ようやく呼ぶと、彼は満足気に破顔して、私をいっそう強く優しく抱きしめてくれた。

村「A」

耳元に吐息がかかる。
びっくりするくらい甘い、優しい声だった。

村「A…好きや。俺のそばにおってくれるんやろ」
A「…はい」
村「俺に、守らせてくれんねやろ？」
A「…お願いしても、いいんですか？」
村「守らせてや」
A「…はい」

ぎゅ、っと一度強く力が加わると、名残惜しそうに腕が離れていった。
彼の顔は、少し赤い気がする。

A「あれ…」
村「…なんや」
A「…紅い？」
村「て、照れるに決まってるやろ！突っ込まんでええねん！」
A「ふ、…ふふっ」
村「…！…やっと、笑ろたな」

そんな彼がかわいくて思わず笑みがこぼれると、彼は心底嬉しそうに私の頭をもう一度ぽんぽんとなでてくれた。

A「信ちゃん」
村「ん？」
A「わたし…よくわからないから、迷惑かけるかもしれないです、だけど」
村「かけたらええ」
A「…へへ、…我儘なんですけど、一緒にいたいです」
村「そんなもん、わがままに入らへんわ！」

こうして私は、アイドル村上信五の恋人になった。

でもわかってる、私は「普通」にはなれない。
もしかしたら彼の思ってる以上にわたしは面倒で、彼から手放したくなるかもしれない。
そんなときは、早く身を引こう。

誰かを大切に思う気持ちを教えてくれた彼のためなら、自分のことなんて後回しでいい。
彼のためになることを全力でしたい。

この考えが、彼の思うところとずれていたことに普通ではない私は気づけないのだけど、たくさんの秘密を彼に隠して抱えたまま、私は彼に愛される女性になった。

生まれて初めて人にまっすぐに好きだといわれるのはなんだか胸が苦しくて、不思議な気持ち。

不安はあるけれど、今は彼のくれる笑顔に、優しさに、言葉に甘えてみたくて。

わからないなりに彼の眼をみたら、何も言わずに抱きしめてくれた。

村「いらっしゃい、やな」