弱い私を愛してくれた【∞紫】【完結】 (ページ7)

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受け入れるページ7

村「よう知らん、Aの過去のこととか、全然」
A「…」
村「それは、知っていいんか、知らないでおってほしいんかも、わかってへん」
A「…」
村「でも、そんなん全部置いといて、俺はAが好きやねん。守りたい、そばにおりたい。ややこしいことなんて後や。お前が手に入ったらいったん落ち着けんねん、俺は」

彼は長い指をそっと私の手に伸ばした。

村「好きや。難しいことは考えんでええ。俺がアイドルとか、お前が死にたいとか、そんなんもいったん置いとき」
A「置、いとく」
村「せや。それで、これだけ考えて」

そういうと彼は今度は両手を私に優しく伸ばしてきた。触れはしないその手に挟まれた私。

村「俺にこのまま抱きしめられてもええんやったら、答えはイエスや」
A「…」
村「いっちゃん幸せにしたる。つらいことは支えたる。なんぼでも我儘いうてもええ」
A「…」
村「俺が嫌いやったら、このまま後ろに下がって避けてくれ。俺は、Aが嫌なんやったらAの嫌なことせえへん。離れるなんてこともいわへん。これまで通り、ただの飲み仲間や」
A「え…」
村「この関係が悪くなるから俺を選ばせるなんて、たちの悪い選ばせ方せえへんよ」
A「…わたし、は」
村「うん」

好き、はよくわからない。
何を言っても伝わらないかもしれない。
私はだってあまりにもきっと彼の知っている普通ではないから。

A「私、すき、とか、よくわからないんです」
村「うん」
A「恋愛？したことも、ないし。だれかから、好きって、いわれたことも、ないし」
村「うん」
A「私、たぶん、普通じゃ、ないし」
村「うん」
A「だけど…村上さんの…優しいの、うれしいし、それに…っ…」

よくわからない感情で、押さえていた涙があふれてきた。人前でなんて泣かないようにして生きてきたのに。

村「俺、泣かせたいわけやないんやで」
A「し、知ってま、す…勝手に…」
村「うん」

わたしに触れられない彼は少し眉を下げた。

村「なあ、難しいこと、ほんまに考えんでええよ」
A「え？」
村「寂しいのも、悲しいのも、ようわからんのも、俺が受け止めたるやん」
A「…っ」
村「やから、それが俺でええなら、俺を選んでくれる気持ちが一ミリでもあるんやったら、飛び込んどいで」

そうして優しく傾げられた顔に笑みが浮かんで、私は崩れるように彼の腕の中に飛び込んだ。
伸ばされていた手は優しく私を包み込んだ。