弱い私を愛してくれた【∞紫】【完結】 (ページ4)

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お酒と腕とぬくもりページ4

村「信五とかいろいろあるやろ」
A「私、村上さんより年下なので、呼び捨てはちょっと」
村「なんか距離あんねんなー。A、なんか気になることでもあるん？」
A「ないほうがおかしいですよ？」

芸能人でアイドルで何万という人から必要とされ愛されている人が、なぜか世界のだれからも求められていない自分のところに通ってくれている。
謎以外のなんだろう。

彼は眉を困ったように下げて、なんでやろなーとつぶやいた。

A「そろそろ、何かあるなら教えてほしいです」

ようやく、私はずっと聴きたかったことを口にした。

村「へ？」

どういう利害があるのだろう。
自分のところに何の得があってきているのだろう。
何を求めているのだろう。

彼になにかメリットがないと、ここに通っている意味がわからない。
何かを要求されるなら、彼と過ごす居心地の良さを少しでも長く手にするためなら、要求にこたえてもいいと思っていた。

A「なにかあるんですよね、私の家に来てくれる意味」
村「意味？なにか？」
A「メリットがないのに来ないでしょう？」
村「A…」
A「私、村上さんみたいに求められている人間じゃないのも知ってます。普通の人よりも求められるような人間なんかじゃないのも知ってます。理解してます、自覚してます」
村「…」
A「どういう理由で村上さんが来てくれるのか、理由を教えてください。要求があるなら可能な限りで答えます。でも、何を要求されるのかわからないままでいるのは、…不安です」

彼は困ったような表情のまま、頭をバリバリとかいた。

何を言われるんだろう？

芸能人だし、自分は女だ。女として価値あるような外見はしていないけど、欲を吐き出す役には立つかもしれない。体目当てなのだろうか？それとも父や母がそうしたように、ストレス発散に殴るのだろうか？

村「A、俺、なんも欲しいと思ってへんよ」

帰ってきた思いもよらぬ答えは、かえって私を混乱させた。

A「…わからないです」
村「なにか取引みたいなことがないと、会いに来たらあかんの？」
A「え…」
村「ただ会いたいんや。Aに会いたいから来てる。それはあかんのか？」
A「…えっと…」
村「ん？なんや？思っとることがあるんなら、言うてや？」

あまりに優しい瞳に、自分が汚い要求を予想していたのが恥ずかしくなる。

A「…みんな、…カラダとか…殴りたいとか…お金とか…何かが理由だったから」