弱い私を愛してくれた【∞紫】【完結】 (ページ15)

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約束してページ15

お開きになって、彼は私の家に寄るというので、居酒屋で解散した。
メンバーさんからLINEを交換しようといわれて、彼は少し複雑な顔をしていたけど、スマホを手から奪われて安田さんが全員分登録してしまったので、彼はもう何も言わなかった。

メンバーさんと別れて歩く道のり、彼は手をつないでくれた。
だけどその手はいつもより力が強くて、少し痛いくらいだった。

A「信ちゃん…？」
村「…なんや」
A「ごめんなさい…私、なにか失敗しちゃったんだよね？だから、怒って」
村「怒ってへん」
A「で、でも」
村「怒ってへん」

そのまま彼は無言になって、つないだ手は相変わらず痛くて。
彼の気持ちがわからなくて、不安が募った。

普通じゃないから、何がいけなかったのかもわからない。
彼の意に反するようなことをしてしまったのだと思う。
彼が恥をかくようなことをしてしまったのかもしれない。

あの個室での会話を反芻するが、私はいつでも普通じゃないから、何がいけなかったのかどうしてもわからない。

そのまま無言で彼は私の家の前についた。
何を言っていいのかわからなくて、私も無言で扉を開けた。

先に一歩私が中に入って、続いて彼が入って扉が閉まる。
狭いこの玄関から抜け出そうとした私は、後ろから伸びてきた彼の手に閉じ込められた。

A「…信、ちゃん？」
村「死ぬなんて、言わんといて」
A「え？」
村「俺のためやったら死ねるなんて、言わんといて」
A「そ、そんなこと」
村「そんなことちゃう！」

彼のこんな大きな声は初めてで、委縮してしまう。
彼は私の肩口に顔を後ろからうずめると、耳元で苦しそうに続けた。

村「俺のために離れるとか言わんといて。俺のために離れることを決めてるって、なんやねん…俺は、お前のそばにおりたいって言ってるやん」
A「信ちゃん」
村「そんなことちゃう。俺は弱ない。やからAを背負ってつぶれたりせえへん。俺が崩れるんわ…」

抱きしめられる腕が一層力強くなる。

村「俺がだめになるんわ、Aがおらんようなることなんや。それだけ。わかっててや」

ああ、やっぱり私普通じゃなかった。
彼の不安に気付けなかった。

私を縛るように絡みついた腕を何とかして取ると、振り向く。
彼は揺れる瞳で私を見ている。

A「…泣いてるのかと、思いました」
村「…泣けへんわ」

そっと手を首元に絡めると、彼はもう一度、今度は正面から抱きしめてくれた。