弱い私を愛してくれた【∞紫】【完結】 (ページ14)

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塞がれた唇ページ14

最後に言おうとした言葉が、突然塞がれた。
彼にキスされたのだとわかるまで時間がかかって、理解する前に唇は離れた。
離れたけど、私の顔を困り顔でのぞきこんだ彼が、少し悲しそうに、だけど少し怒ったように、表情をゆがめていた。

村「何勝手なこと言ってんねん。俺がお前を守るって言うたやろ。離れるとかせんでええ。弱いままでもAにそばにおってほしいねん、俺が！」

そういうと彼は姿勢を正した。机の下で、私の手に指を絡めた。

村「丸、お前が心配してくれんのはようわかった。Aもがんばるって言うたやろ」
丸「言うたけど」
村「丸、それにな。Aが俺を必要なんやなくて、俺にAが必要やねん」
丸「信ちゃん…」
村「俺のメンタル心配してくれんねやったら、一秒でも長くAと俺が一緒におる方法考えてほしい。俺、Aがおらんとあかんねん。やっと手に入れてん。もうどこにも離したくない。でもこいつ、すぐ消えてしまいそうやから。俺はそっちの方が怖いんや」

絡められた指がぎゅっと強く握られて、彼がそんな風に怖い気持ちを持っていたなんて初めて知った。

丸「君、信ちゃんのためやったらどこまでできる？」
A「死ねます」

素直に口をついて出た言葉だった。
彼のためなら死ねる。本当にそう思った。

丸山さんは一口お酒をあおって、うーんと天井を見た。

横「丸、満足したんか」
安「ふふ、もう言うことないんやない？」
大「あれだけ村上くんに言われたら、なあ？それにAちゃんの覚悟もちゃんとできてたやん」

上を見ていた丸山さんはゆっくり正面を向いた。鋭い視線に身構えたけれど、その瞳は打って変わって優しいものに変わっていた。

丸「ごめんね、すっきりした。信ちゃん、ええ女の子見っけたんやね」
村「せやからずっとそう言ってるやろ」
丸「Aちゃん、いろいろわーって言ってごめんね、でも心配やってん」
A「はい」
丸「でも、君は信ちゃんのこと、傷つけるような人やないし、軽い気持ちやないのもわかったから、もうええの。ありがとね」

丸山さんはもう一口お酒をあおるとこれまでが嘘みたいににこにこしていた。

それからは、はしゃぐみたいにふさげて笑う丸山さんと、それをみてケラケラ笑う大倉さん、さっきはごめんねって、こっそり声をかけて優しく微笑む安田さんと、彼に聞こえない音量でヒナを頼むな、っていう横山さんに囲まれて、幸せな時間を過ごした。

認めて、もらえたのかな？